あのマンガの実写化は正直地雷だろう、と踏んでいた。
無理でしょ。どーしたって無理でしょ。
……そういう期待感(非期待感)で見に行ったせいか、現段階での印象は悪くない。
でも正直言うと、見てる間は若干退屈でしたけどね。
映画のストーリーは、お互いの気持ちに気付かない剛男と凜子が、ずーーーーーーーーーっと
すれ違い続けて、ようやく両想いになるというのがクライマックス。
まあ凡百の映画ならそう作っても仕方ないけど、そういう話にしてしまうとマンガとは全く違う話になるんですよね。
例えて言えば、「ロミオとジュリエット」をキャピュレット家とモンタギュー家の「仁義なき戦い」として
映画を作るようなもん。
そういう話を「ロミオとジュリエット」ってタイトルにされても困りますやん?
今回の「俺物語!!」はそこまで極端な内容の乖離ではないけど、内容の改変(改悪)であるのは間違いない。
マンガの「俺物語!!」はですねえ。
あの剛男の、少女マンガとは思えないぶっとい線のキャラクターや、ギャグと少女マンガの融合もそうだが、
のろけをマンガにした!というところが新しいわけですよ。ラブストーリーではなく。
のろけだけでもマンガになるんだ!という驚き。
普通、延々のろけなんか聞いたってしょーがないでしょ。
でもあのマンガでは、恋愛の山あり谷ありよりも(もちろんストーリー上の起伏としてないわけではないけれど)
お互いがお互いをどれほど好きか、ということが主題です。
だから「春っていいねー」「春はいいなー」「夏も好きだな」「ああ、夏もいい」って延々とやってるわけで。
正直読んでアホらしくなるが、そこをアホらしいと切り捨てさせないのがあのマンガの稀有なるところ。
だがこの映画はただのラブストーリーですからね。
監督はマンガの読みを間違っているとしか言えない。まあそこまで読めというのも男性にはカワイソウかな……
映画としては、冒頭のシーンでまず残念感が出てしまった。
卒業式での見送られ方は、それほどハードルが高いシーンだとは思わないんだけど、監督は手ぇ抜いたねー。
まず剛男の登場のアングルが悪い。もっとドーンと撮ればいいのに。
目線の高さだから迫力が出ない。一人でいる時間が長いからむしろ人気者という設定が伝わりにくくなってる。
クラスメイト役や後輩たちの外見と演技は相当に手抜きで、後輩たちは柔道部という設定なんだから
(と、映画ではわからないだろうけど。むしろここがわからないということも手抜き)
もっとごつい系の顔ぶれを揃えなければいけないし、柔道着の方がいいし、
クラスメイトももっと熱血に別れを惜しんでないと剛男の謎の魅力が伝わらない。
あれでは“普通”である。普通の卒業式の別れじゃイカン。
次に砂川初登場のシーンもガッカリした。
ちょっとその前に砂川のキャスティングについて。
わたしは坂口健太郎という人を多分初めて見たのだが、
……そもそも坂口健太郎を超イケメン設定にするのはだいぶキツイものがないか……。
いや、イケメンではあるけど。マンガの雰囲気とはなかなか似通ってるとも認めよう。
ただ、実はマンガでもそこまでかっこ良く描けてないんだよね。
作画のアルコは女の子の表情はとーっても上手に描く人だと思うのに、かっこいい男性がね。
何しろたった2人しか出てこないイケメン(砂川・織田)でさえ、あれ、描き分けが出来てるといえるかどうか……
髪の毛の色とホクロだけで何とかしようとしてないか。
マンガは一応記号として、「砂川は見た女子が全てハート目になるほどのイケメン」として
百歩譲ってガマン出来るが、実写だとね。実写のハードルが高いのはそういうところ。
個人的には、若い頃の岡田将生くらいならあのイケメン設定も納得出来るかな。
入学直後の坂口健太郎に学校中の女子がキャーキャーというシーンもあるんだけど、見ててツラくて。
いやいや、そこまでじゃないっすよね?とツッコミたくなる。
そう、そして砂川の初登場シーン。
それこそ超イケメン設定なら、ファーストシーンがあんなに地味じゃいけないんじゃないかねえ。
まずがっつりアップで顔を映す!少なくても“彼はイケメンなんですよ!!”と盛り上げる!
そういう記号化がまったくなく、しかも伏し目がちのアングルで、地味なことこの上ない!
そして、このシーンで感じたんだけど、ほんとは砂川はもっと冷たいヤツとして描かなきゃね。
あれではただの気弱ないい人である。無愛想で冷たいヤツに見えるけど実はいい人で、そういう姿は
剛男と大和の前でしか出さない、というのがウリなんだから。
クールさを出そうとしすぎて無気力っぽい感じのアニメと、実写を足して二で割ればちょうど良かったかも。
わたしは砂川には全編を通じてだいぶ不満があります。坂口健太郎には罪はないと思うけれども。
エピソードは超つぎはぎで、つぎはぎなりにがんばったと思いますが。
予算を少ない方少ない方へ持って行ってるのを感じる。そこはまあ仕方ないが。
出会いのシーンが電車の痴漢ではなくナンパ男だったのも、
いやいやそこは私服じゃない?というところでもこれでもかと制服だったのも、
恋人同士になってからのシーンの筈なのに、2人ともこないだと同じ服じゃんね?というのも、
……イロイロ、低予算の厳しさは感じました。
で、この映画の美点。ああ、数々のダメだしの後、ようやく。
鈴木亮平がとても良かったと思う!!
わたしは鈴木亮平じゃなければ見に行かなかった。彼はこないだの(数ヶ月前の)
世界ミステリー遺産という旅番組での旅人役を見てから贔屓にしており。
……しかし役者として見るのは初。役者を、演技を見ないでヒイキするとはあるまじきことだが、
旅人としてのスタンスにとても共感が出来たんだよう!
そしたら今回の剛男、それはそれはハードルが高い役柄だったにも関わらず……やったね!
こんな、ほんと実写化不可能と言い切れるキャラクターを。よくぞここまで。
年齢32歳。マジメにマジメに取り組んだことを褒め称えたい。
30キロの体重増も褒め称えたい。というか健康は大丈夫か。
で、見事な表情筋の演技も見せてくれたし、剛男の包容力も充分にあったと思う。あの剛男のですよ。
まああの「好きだああああ!!」だけ聞いてるとアレですけれども、とてもいい仕事だったと思います。
永野芽郁嬢がとっても可愛かったですね!主に褒めたいのは顔の可愛さだが、
演技という意味でも嫌味がなくて良かったのではないでしょうか。
大和も相当難しいキャラクターなんだよね。アニメよりも実写が勝ち。16歳で健闘。
せっかく可愛いんだから、もっと可愛い服をいっぱい着せてあげたかったなあ。
寺脇康文と鈴木砂羽は、出番はそんなになかったけどいい造形でした。
もっと見たかったけどね。2時間で父母がそんなに出て来たらそれはそれで困るし。
あ!そうそう、マンガでは全くかっこ良くない尾安化高校の岩田?くん、映画ではけっこうかっこいい子が
演じていて目に止まった。
この映画、オール仙台ロケだったそうです。なんで?復興支援?なんか縁があるの?撮影費が安い?
ボランティア組織があるから?
いずれにしろ、見覚えのある場所が時々映って楽しかった。
しかし最初のうちはそんなことをすっかり忘れていて、西公園の歩道橋のシーンでようやく、
ああ!そうだった!と思い出した。学校とかのシーンが多いから、教室なんかではわからないしね。
鈴木亮平は今後もがんばってくれ!出来ればわたしが見たい系統のドラマに出てくれ!
世界ミステリー遺産の第二弾も期待している!
永野芽郁もがんばれ!
うーん。長いな。
コメント