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◇ 恩田陸「まひるの月を追いかけて」

こわいよう、恩田陸。

わたしはかなりの怖がりなので、自分から恐怖を求めることはほぼ絶対にない。
だが恩田陸は読み続けている。わたし、この人って、最初に「夜のピクニック」から入ったせいか、
ホラーのイメージが定着しないんだよね。
でも実際はけっこうホラー率が高く……うかうかと読んでいって、毎度その部分に来て「怖ぇぇぇ」と呟いている。

本作でも「怖ぇぇぇ」が何度かありました。
恩田陸はいかにもホラー、という書き方はしない。むしろおっとりと書き始め書き続け、
物語が半ばを迎えた頃、とある一行で一気に背筋を凍らせる。背筋をひょう、と冷たい風が吹きすぎる。

いつも通り今回もどんでんを返しまくり……
でもわたしは、この人のどんでんは概ね成功していると思いますよ。普通あんだけやったらうるさいと思うのに。
ただ今回は、最後のどんでんはあまり効果的には感じなかったな。それより前のどんでんは、
その度に「怖ぇぇぇ」だったけど。

この話は奈良へ観光旅行に行く話なので、半年前に奈良に行って大変癒されてきたわたしには、
そういう意味でもとても愉しい話でした。
今回の舞台とわたしが行ったところはほとんど重なってないけどね。東大寺と斑鳩の里くらいか。
飛鳥にも行きたかったけど、行けなかった。数年内にまた行こう。

あと、恩田陸が旅について思うところを書いている部分も好きだな。いろんなことを書いているけど、
それについて一々賛否を考えながら読んでいた。
わたしは旅が好きだが、出発前に憂鬱になるのはほんとにそう。
わたしはそれをマリッジブルーごときもの(慣れ親しんだ状態への執着=新しい環境への怖れ)と思うが、
恩田陸は色々書いている。ふんふんなるほど、と思いながら読む。

いつもの恩田陸より読みやすかった感じ。いい意味でうまくまとめた感があった。
わたしは恩田陸、その奇妙さゆえに作家として好きなのだが、それは作品が好きなこととはイコールではない。
諸手をあげて作品世界に賛同出来るのは……そうだなー、今まで20冊くらい読んでるが、
(!!20冊も読んでた?それでも大して減った気がしないぞ、残りの未読作品。どんだけ多作)
好きと言えるのは6冊くらい。3割バッターを評価するべきなのかもしれないが、
ヒット率3割では好きな作家とは言えない。いや、創作家としては好きですよ。あの腕力が魅力。

しかしこの人のタイトルはねえ……。
話を全く表さない。キャッチーなのはいいのだが出来ればもう少し内容を表したタイトルを希望だ。
タイトルからは話をまったく思い出せない場合が多い。

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