実は30代くらいの若手?作家だと思ってました……。
そしたら本作は1998年出版なんだって。びっくりした。
多分わたしが北村薫を初めて読んだのがその頃か、もう少し後だったんじゃないだろうか。
北村薫を読んでなかったら、そしてわたしがもっと若かったら、この作品は衝撃の出会いになったかもしれない。
「冬のオペラ」に衝撃を受けたように。
この人の作品は厳密に言えば2作目。
ちょっと前に「小説ルパン三世 競作アンソロジー」という本を読み、特に惹かれるものがなかったので、
これを読む前はほとんど期待感がなかった。
図書館で借りて、本を見て、
あら、表紙はおおた慶文なのね。ひと頃すごく流行ったよねー。相変わらず可愛いねー。
モデルのアイドルなり女優なりの顔がモロわかりなので、絵が可愛いわりには
わたし自身は、いまいち評価が低かったイラストレーターだが。まさに1998年頃は人気のあった頃かも。
プロローグで、予想と違って女子高生が主人公だったので意外。
高校生のミステリも数多あるけど、そういうのはタイトルに高校生の雰囲気がある気がする。
この本のタイトルには高校生を思わせるものが何もないでしょう。
まあ、おおた慶文が表紙にセーラー服の女子高生を描いてる時点で気付きましょうね、という話だが。
森のレンジャーが探偵役?で、ケース自体は日常の謎系とはいえ、人の死が絡む(殺人ではない)少し重めのもの。
謎解きが売りとは決して言えないが、その他の、自然に対する感受性の部分がいいんだな。
ストーリーで書く、キャラクターで書く、文体・文章が売り、と小説にはいろいろ種類があると思うが、
これは感受性が売りの小説。こういうのはシンクロしない人には全く訴えかけないだろうけれども、
合う人には愛されるだろうね。20代くらいまでに出会って欲しい作品だな。
なので、今20代の人は急いで読むように。
読みながらけっこうずっと泣いてたな。
きれいな、透明な、あざとさの全くない話。心を丁寧に描いているので、人の心の柔らかい部分に訴えかける。
作った話ではなくて、そっと生まれたような物語だ。
東京創元社
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“不幸ではないが、辛かった。”
罪悪感なしにそう認められたら楽になれる。
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