ノイタミナ枠の再放送。全11話。
いや、これは面白かったね!!
原作を1年弱前に読んで(わたしにしては超最近)いて、原作はあまり感心しなかった気がするけど、
――とかいうと森見登美彦が泣くかもしれないが――これ、アニメにしたらほんとに話が活きました。
原作は、すでに内容を忘れているが、どうやら4つのパラレルワールドの話だったらしい。
アニメはもっとパラレルワールドが増えている。
文章でパラレルワールドのズレを愉しむのは少々辛気臭いが、映像、しかも正味20分のアニメというのは
ズレを愉しむにはおそらく最適のメディアですねえ。
20分。内容の濃い20分。
どこからどう言えばいいのかよくわからないが、まず良いところは、
画面のデザイン性。
けっこう気合い入っていた。こういう部分は演出の人の手柄ですかね?
20分べったり同じものを動かすんじゃなくて、切り絵のようなの、実写のようなの、普通のアニメ絵、
とかいろいろあって、その比率がなかなか絶妙だったのではなかろうか。
切り絵のような部分は色が相当に凝ってたよね。賑やかで派手なんだが、煩くはならず、
同系色好きの保守的なわたしでも不快ではなかった。暗色を多用してたのが良かったのかな。
色の組み合わせが独特。
カット割りも多用していた。かなりスピーディなので、動体視力がすっかり衰えているわたしとしては、
もっとゆっくり見せてくれてもいいんだよと思わないこともなかったが、
その速さがまた面白いんだろうなー。
原作の口吻を忠実に写した一人称の饒舌さ。
これは「私」の声優が大変だったでしょうねえ……。早口で文字数たっぷりで息継ぎの暇もない台詞。
橋田壽賀子なんか目じゃないぜ。
「私」の声優は浅沼晋太郎。とても絵柄と合っていて、早口にまくしたてられても全く嫌味がない。
良い仕事でした。
シュールなのだが、衒いのないシュールさ。自然なシュールさ。……自然なシュールってあるのか?
まあでも必然性の感じられるシュールさ。特に小津の造型が。原作を読んでいるだけでは
あれほど妖怪然としたキャラクターは思い描けなかったが、思い切って人間離れした造型にしたことで、
とてもキモカワイイ。あのギザギザした歯もチャームポイントに見えてくるから不思議だ。
最終話だけ、キモチワルサがなくなって、ほんとにカワイイ顔になってるんだよね。頬赤らめて。
占い婆のわずかずつのズレも好きだったな。1000円ずつ値上がりして行って、
5000円とかになる頃になると、それぼったくりやろ、と「私」が気の毒になったけど。
樋口さんはわかりやすいユニークさ。こういうユニークはそんなに珍しくない。
しかし一服の清涼剤ではあった。羽貫さんも意外に普通の人だが、2人はそんな関係だったんですか……。
まさか一緒に世界一周をする仲だとは……
香織さんもある意味強烈なキャラクター。ラブドールだそうなんですが……思わず検索してしまったが、
今どき、同棲する人形も納得できるほどカワイイんですねえ。相当高いが。
城ヶ崎のキャラクターで、そんなに純愛を貫けるのかは少し疑問だが、
いかにもなキャラクターがいかにもなことをしないのがキャラクターの厚みなのか。
明石さんはもう少し活躍して欲しかったかな。
「成就した恋ほど語るに値しないものはない」(うろ覚え)というのは「私」らしくていいが、
もう少し語って欲しかった気もしないでもない。
全体を通して見て(録りためていたのを一日に1話強くらいのペースで見たから)感じるのだが、
前半はアーティスティック、3人の女性が絡む話だけちょっと通俗に偏し、
10話は純文学風シュール、そして11話は……
こういう話にしては何だか見事なエンディングだったのではないでしょうか。
“なんだか見事な”という形容詞も無いと思うが、あんなひねくれてた主人公があんな風に
とってつけたようにふっきれてエンディングを迎えるわりには、そのとってつけ感が気にならなかった。
巻きの(巻きでお願いします、の巻き)20分だったわりには、むしろ爽やかでしかもなんとなく説得されてしまった。
いい仕事だったと思います。スタッフの皆さん。
こういう、考えてるんだ!と感じさせる、工夫のある作品は有難味がある。
今後ともがんばってください。
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ちなみに、近頃アニメが始まった「アルス○ーン戦記」……
前にアニメ化した時も思ったのだが、面白い原作に忠実に作ったからといってアニメとして面白くなるとは限らない。
そういう作品な気がする。最初の10分でつまらなくなり視聴中止。
10分で見限るのも根気のない話だが、あの少年の造形では、数多く家来を従えるアルスラーン殿下の
人間的魅力というのは出せなかろう。
フィクションの最高到達地点の一つが、“まるでその世界がどこかにあるように信じたいと思わせる”ことにあるなら、
あの少年の造形では無理だ。数ある歴史風ファンタジーのフォーマット上の作品。
作り手には、原作に対する誠実さはあると思うけどね。
しかし活き活きとした発想の飛躍、工夫がなければ、創作物としての魅力は乏しい。
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