PR

◇ 森見登美彦「ペンギン・ハイウェイ」

珍しく京都以外もの。そして珍しく、一人称少年もの。

んー。だがわたしはあんまり好きってほどではなかったなあ……。
特に腹は立たなかったけれども。どっちかというと面白いとは思ったし。

しかしこういう話ならば、どこかで他の誰かが書いてもいいように思う。
はっきり言えば、なんかどうも村上春樹のニオイを感じて嫌だった。村上春樹、嫌いなので。
多分「お姉さん」の造型が村上春樹っぽいんだな。
わたしは森見登美彦は村上春樹を愛読するタイプの人だとは思わないので(願望)、
別方向から育った他人の空似的類似だと思うけど。オトコの勝手な謎の美女という点で似てしまうんですかね?

たしかに主人公のキャラクターは大学生を主人公にした他の作品とブレてないと思うんだけどね。
このキャラクターは若干面白かった。
こういう小学生がああいう大学生になるのはよくわかる。
多かれ少なかれ、森見登美彦もこういう小学生だったんだろうなと――
そういう読み方をしては怒られるのかもしれないが、そう思った。

だが、やはり小学生が語り手ということで乗り越えられなかった壁――
森見登美彦の小説において最大の魅力だろうとわたしが思っている言い回しの面白さは、
この本のなかにはほとんどなかった。
いつもなら何ヶ所かは「あっはっはぁ!」と磊落に(?)つい笑ってしまう言い回しがあるのになあ。

お父さんに叡智があり過ぎて、いやこんなお父さんはいないやろ、とかね。
それに対してお母さんはフツーですね。森見登美彦はお父さん子?
わたしも幼稚園の頃、死ぬのが怖くて泣いたことを思い出した。
その時に母親が言ったことが「死ぬなんてずっと先のことなんだから怖がらなくていい」だった。
先であろうとなかろうと死が怖いのに、先のことだから怖くないというのは全く非論理的。
ナニヲイッテンノカシラ、コノヒトハ。と思った。

今、もしかしたら一押しかもしれない作家だけに、次の作品に期待したい。

コメント