この人の小説は、好きって程じゃないけど読んでいる。多分今後も読むと思う。
エッセイはちょっと好き。実は内容は薄いイメージがあるけど、今回のこの本を読んで、
意識して素直に書いてるんだなあと少し認識を新たにした。
今回面白く読んだのは第2章。
主に読書のことが、あとは「紅の豚」と国会訪問と森見登美彦との邂逅を(短く)書いてある。
読書は「いま大人に読ませたい本」を読んだ直後で、そこにも出てきた井上靖。
その井上靖読破に万城目学が挑んでいるので、その共時性を愉しんだ。
――あー、そしてここで万城目学が書いている内容を大雑把にでも紹介し、
それに対する自分の感想を書くのが筋なんだろうが、
……めんどくさくて出来ません。なら記事に挙げるな、という感じですね。
まあとにかく彼が言うには、こんなに一度にたくさん読んだら飽きて嫌になっちゃうのではないか?と
思っていたけど(彼の表現によれば“芋粥”状態)、そんなこともなかったよ、というのを書いてた。
こんないい加減な要約でほんとーにスマン、万城目学。
読んで面白かったのは、そんなこともなかったよ、という理由の部分なので、
その辺が知りたい人はぜひ実際に読んでいただきたい。
万城目学の、総じて言えば軽い、薄いエッセイの中で、やっぱり物書きなんだなあと思わせたのがこの部分。
「いま大人に読ませたい本」で薦められていた井上靖の「風濤」、
これは元寇を、元の圧力に屈するしかなかった高麗皇帝の側から書いている話だそうだが、
万城目学は退屈に読んだそうで……。わたしはリストに入れようかどうしようか迷ったので、
(結局入れなかったんだけど)やはり人それぞれなんだなあと思った。
万城目学によれば、井上靖の人物の距離感は独特だそうだ。すごく懸隔があるように書いてるって。
そんなことを言われると読んでみようかなと気を惹かれるが、やっぱちょっとめんどくさいわ。
井上靖は多分「敦煌」を持ってたな。再読はしていない。あとは多分読んでない。
「紅の豚」が好きだそうだ。わたしも好きなので、このエッセイはさてこそ、と思いながら読んだ。
シメの部分には不覚にも感動して泣きそうになった。そんなに大したことを書いてるわけではないのだが。
豚が豚であり続けることの凄味は、わたしはまだ感じ取れないけれども。
森見登美彦との邂逅は、――邂逅といっても多分単に初めて飲みに行っただけのようなのだが――
超あっさり書いていた。察するにそんなに特記すべき事柄がなかったようだ。
そう、わたしが万城目学のエッセイで今回感心したことは、書くことがないからといって
いかにもなネタで話を引っ張らないところ。
……まあひっぱってるから薄いと感じるのかもしれないが、書くことないんだなとわかるというのも
ある意味作家の作品としてはありじゃないかと……こんな風にアマく見るのは滅多にないことだが、そう思った。
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