映画とかドラマとかで散々聞いてた気がするタイトルなので、大作かと思っていたら、
分量的にもそうでもないんですね。
そういう意味では若干肩すかしか。もっとがっつりした話かと。
面白かったことは面白かったが。
でも今まで読んだ「悪女について」「開幕ベルは華やかに」で感じた鮮やかさはなかったなー。
決して嫁姑のどろどろした関係をみっちり読みたいというわけではないのだけれども、
だいぶあっさりしすぎかと思った。あっさりというか、そこを書かないところが話のキモというか、
何があったわけではないのに、いつの間にか不倶戴天の敵になる嫁姑の関係の怖さ、
――というよりもむしろ、於継の人間が怖い。という話なんだろうけど。
於継の度を超した綺麗さ、美に対する執念というのは良く伝わって来た。
於継の造型はやはり鮮やかというべきか。
出来れば、わたしは医療関係をもっと詳しく書いて欲しかったな。
江戸時代の医療関係をちょっとでも詳しく書こうと思ったら、膨大な資料調べが発生するんだろうから
そこを避けて上手く書くという選択をしたのだろうけど、そこにがっぷり四つに取り組む話を期待してたんだよね。
例えば宮尾登美子の「蔵」における酒造りみたいな。あれは酒造りについて詳しく書いたからこそ
面白い話になったんだと思う。なので華岡青洲の医業についてもっと読みたかった。
何しろ「開幕ベルは華やかに」で舞台の世界をみっちり書いてくれたからね。
あれで、下調べをみっちりやる作家というイメージがついた。
あれはやっぱり自分が実際に身を置いた世界のことだからこそそこまで書けたってのも大きいんだろうな。
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