PR

◇ 恩田陸「ロミオとロミオは永遠に」

一体どんな話になるんだ、このタイトルで?……と思ったが、何とあとがきで、
なぜこのタイトルなのか、理由を思いつかないので訊かないで下さい、などと書いてあり、
……こら!どういうこっちゃねん!恩田陸!

えー……一言で言えば、最近増えた、サバイバルゲームジャンル。
いや、むしろ2002年出版ならば、ハシリというべきかもしれないな。
SF。というより、あの頃のSFへのパロディというかオマージュ。

あの頃ってのはどの頃かというと、やはり1980年前後でしょうねえ……。
わたしはSFの歴史がよくわかっているわけではないけれど、多分あの頃がブームだったのではないだろうか。
恩田陸はあの辺の作家を多分たっぷり読んだろう。

この話は、恩田陸の若かりし頃の風俗がふんだんに散りばめられている。
そういう意味では、これは普通の小説ではなく、やっぱり昭和風俗のオマージュとして読むのが
一番正しいスタンスと思われる。なので、このノリについていけない人はちょっとツライと思う。
いわば小説によるナツメロですね。この言い方が一番ハマるだろう。

ナツメロなので、なんというか……きっちりとした小説を期待してはいかん。
これでもか、と懐かしい風俗を盛り込む手腕はいつもの恩田陸のネタ詰め込み放題の腕力そのままだが、
ネタ詰め放題であれば万人向けであるのに対して、懐かしネタに反応出来るのはどうしても世代が限られるでしょ。

まあ最近は若い人にも昭和ネタが広がっている部分はあるように思うし、
そこまで読む人を選ぶ話でもないけど。
しかし、決して後味が良い話ではない――恩田陸は大抵そう――前味も中味も爽やかでは全然ないので、
苦い話でも平気な人向け。わたしは……苦い話はきらいだから(^_^;)。

ロミオとロミオは永遠に〈上〉 (ハヤカワ文庫JA)
恩田 陸
早川書房
売り上げランキング: 410,499

恩田陸の話はほぼ好きではない。……が、なんか作家本人が好きなんだよなあ。
それは作家にとってはそう嬉しくはない気がするが。
辻邦生なんかもそうだな。歴史物で何作かはとても好きなものがあるけど、
作品全体としては総じて好きというわけではない。
しかし人間として好き。辻邦生ならば会ってみたかったと思う。

コメント