表紙の威力というものをひしひしと感じる。こういう表紙じゃなければ面白さ一割減かもなあ。
うっすらかわいい系のイラストで、そういうハンサムな人が語っていると想像するからこそ面白いというか。
そうでなければ、少々ワンパターンに感じるかもしれない。
表紙って大事。かといって、あまり“作品!”になってるのも微妙なところなんだけどねー。
たとえばクラフトエヴィング商会の装丁は、あまりにも作品になってしまっていて、
ちょっと主張が強すぎると感じることがある。見事なんだけどね。作品としては。
ホックの他の作品を何冊か読んだが、悪くはないけど……という感じだった。何読んだかな。
「コンピュータ検察局」
「怪盗ニック登場」
「ホックのシャーロック・ホームズ」(ホームズのパスティーシュもの)
かな。まあまあそこそこ。でもまあまあそこそこのレベルのものも許容して延々と読み続けていると、
死ぬまでそこそこの本しか読めないことになるので、最近はそこそこレベルのものはあっさり切るようにしている。
まあ年をとって堪え性がなくなってきたということも大きいんだけど。
ホックはこれで最後、と思って「サム・ホーソーン」シリーズを読んでみた。
(上に述べたことと反してけっこう粘ってますよね)
1冊目で止める気満々で読んだのだが、けっこう面白い。
昔、素人探偵として活躍した医者が、(誰かわからないが)話し相手に、昔話として事件を語るという趣向。
あっさりした短編なので、通勤通学のお供には適当ですよ。
解決部分はそこまで感心しないけれど、謎の設定の仕方は上手いなー。
短編のわりには劇的に、話を大きく作る。世の短編ミステリって単なる頭の体操とか、頓智問答か、というのが
多いでしょ。そう、けっこう短い短編のわりにキャラクターが活きてるしね。
脇にもう少しだけ厚みが出たらもっといい。
でも短編で脇役だと往々にして出てきたと思ったら、死体になってしまったり、犯人になってしまったりするから、
そういう罠を生き延びるのは難しい。いつ看護婦のエイプリルが犯人になるかと思うと気が気じゃないですよ。
6巻まであるそうだから、とりあえずシリーズはみんな読むだろうな。
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図書館にあるシリーズ5巻みんな読んだ。
前にリストをチェックした時は6巻だった気がするし、5巻ではちゃんと完結した感じにもなってないから、
6巻は紛失本かなあ。
5巻まで、ずっとレベルを保った面白さだった。けっこうすごいことだと思った。
これは短編で、一応規模は小さいけど、不可能犯罪をメインに扱ってるのね。
これを12編×5巻=60編やるのは相当なことだと思うのだが……巻数が進んでもレベル落ちなかったもんねー。
まあそりゃ、無理くりな解決もなかにはあったけど、概ね立派な作品だった。
ミステリの短編て、なんかこう……小噺に堕しているものも多いから。
ホック先生も、1巻は20代半ばで颯爽とした若医者として登場するのに、5巻ではもう40代半ば……。
月日は流れていくが彼はほとんどキャラクターも変化せず、ちょっとかっこ良くて
ちょっと素朴で野暮ったい。その加減がいい感じ。
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6巻で(ようやく)結婚するそうだ。買えるけど、買うまでではないんだよなあ……。
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