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フィギュアスケート GPシリーズ アメリカ大会 2014 男子。

さて。
始まりました。フィギュアスケートのシーズンが。

これから毎週毎週GPシリーズの録画を7時間~9時間見なければいけないのかと思うと若干憂鬱ですが、
……誰に頼まれたわけでもなく、自分がやっていることなので愚痴を言ってもしょうがないねん。
まあ久々の競技会は見ててやはり面白かったしね。

ショートプログラム。

いやもう、これは町田樹。

彼のコッテリしたキャラクターは、あそこまで行くともう黙って見ているしかないというか、
まあまあ、ええやないかと思うのだが、完全非公開のなんたらかんたらとかいうのはいかがなものかと思った。
見慣れた、とか見飽きた、などはわたしのような素人が言うことであって、
データ量の少なさは、本質的にはスケートの良さには関係ないでしょう。
採点する人はそういう部分に左右されるべきではない。
それでもまあ、現実的にはインパクトでも、それを見た素人の反響からしても、影響するとは思うけれどもね。

そういう勿体のつけ方は、しかしずいぶん自分を追い込むでしょう。
――そこで、あんな見事な演技をしたんだから、ま~~~~大したもんですよ。

もしフィギュアスケートの評価点が、“自分を表現すること”という一点のみである世界があったとしたら、
彼は史上最高得点じゃないかね。自分の世界の構築力がすごい。
本人が入りこんでいて、それに観客も惹きこまれる。昨年のエデンの東も曲の良さと相まって名作。
あれを超えるのもなかなか難しかろうと思っていたが……よく作って来たねえ。

そして何より、そこまで自分を追い込んでそして演技をほぼ完璧に成功させたというのはね。偉いと思う。
やっぱりそこは賛嘆せずにはいられない。
彼が20歳の頃、ここまで来るとはほんとーに思えなかった。
蛹が蝶になった。(わたしが見てるフィギュアスケーターの中で)史上最も大きく脱皮した選手かもしれない。

ジェレミー・アボットは、彼の年齢からして、もうすっかり引退したものだと思い込んでいたので、
今回スケートアメリカで見て、「おおっ!まだいる!」と素で驚いた。がんばりますね。29歳ですよ。
ロシアのメンショフは30歳超えてるけど。

わたしは、彼の真骨頂はその独特な、繊細な演技だと思っているので、
今回のショートはアボットらしさが今一つ感じられない振付だと思って見ていたかな。
演技としては良かったと思いますが。少しジャンプとかは重い感じかね。
衣装とヒゲで恰幅が増し、おっさん度2割増し。

余談ですが、キス&クライでの佐藤有香さんのマダムぶりも健在。

ジェイソン・ブラウンはほんとーに楽しそうにスケートを滑るよなあ。
ダンサブルでももちろんあるんだけど、よりスケートそのものに対して楽しそう。
去年までは若干海のものか山のものかと思って見ていた部分はあるけど、19歳でこれなら、
今後面白くなるだろうなあ。
そして演技後の彼を見るといつも思うが、……女子力高そう。

テンちゃんはね。ジャンプ駄目でしたけどね。
滑り始めのあの体のラインを見て、「テンちゃんもここまで来たかー」と感慨があった。
16歳の頃はね。武骨で素朴な滑りでね。
表現力なんてどこの世界の話だろう、彼はこのまま武骨系で行くんだろうなと思っていたところ、
一昨年くらいから演技に目覚めたようで。ストーリー性のあるものを滑るようになったし、
コミカルな振付にも挑戦するようになったし。

まあわたしは武骨なテンちゃんの滑りも好きだったですけどね。
でも上手くなったなあと。美しい滑りになったなあと。しみじみ思う。
だからこそ、ジャンプは成功させなあかんよ!やはりテンちゃんはジャンプを成功させてこそ。

ピトキーフは今回初。手足が長く、今後の成長の可能性を感じさせつつも、そこまでは感心せず。
ロシア男子が陥りがちな、伸び悩みの罠にはまらずにいけるかどうか……。
わりと多い気がするんですよね、ロシア男子。17、18歳でおお、これは、と思わせつつ、
その後失速してしまう。古いところではアプト、メンショフも伸び悩み、
コフトゥンとガチンスキーが今後どうなるか……。

コフトゥンは2年目か3年目なのでまだ出てきたばかりのイメージはあるが、
ガチンスキーは世界に出てきたのが早かったわりに、その後それほど上位に来てない。
今回もちょっと力みを感じる滑りだった。ロシアの選手は総じてクラシックの似合う、
好きなタイプの滑りの人が多いんだけどね。

わたしはむしろナム・ニューエンが。16歳にして既に達者。
この人は出て来るだろう、今後あっさりと、世界のトップクラスへ。ユヅルのライバルになるだろう、今後長く。
柔らかい滑り。甘く見てはいられない。

全くフィギュアスケートの土壌がない国の選手は印象深いものだが、
去年ソチに出ていたフィリピンのマルティネスも注目の選手だった。
今回、スケートアメリカに出てきて、順調に育っている印象。この人も柔らかい。強くなるかもしれない。
現状、男子シングルでは一番美しいビールマンスピンを持つ人ではないか。

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フリー。

マルティネスは少し気合いが入り過ぎていたかな?今後場数を踏んで、冷静さを身につけられたら期待出来る。
ジャンプの確実性も上げてね。ステップもいいし、難しいバランスのイーグルからのアクセル良かったし。
もちろんビールマンは昨日と同様美しい。

ナム・ニューエン。(ナム・グエンと表記されることもあり、現時点では一定していないようだ。)
わたしは今回、彼が一番の驚きでしたね。ジュニアから上がったばかりの選手がほぼノーミス。
たしかにダメ元で気楽に滑れるということはあるかもしれない。でもそれだけではない達者な演技でした。
3回転-3回転も軽々。4回転も軽々。片手を上げた3-2-2も成功させ、舞台度胸満点。
つーか、どうなの、これ?すごくない?
まあ今後、後半ちょっと怪しい体力もついてくるだろうし、コレオがもう少し細かくもなっていくだろうし、
……来ますね。確実にこの人は。

ガチンスキーはやっぱり力入り過ぎな感じかなー。そもそも力強さが売りなんだろうが、それにしても。
もう少し力を抜いて、冷静になると良くなるんじゃないのかなー。
……そして彼の生え際は21歳にして……気になる。

ピトキーエフは体が細いせいか、少し弱く見える。
わたしは今のところはそれほど。

テンちゃんなー。ショートに引き続いてジャンプがなー。
何とか跳べたジャンプもほとんど詰まってたし。1回くらいじゃないかな、きれいに跳べたの。
今回の曲の「十面埋伏」は彼の雰囲気に合ったいい曲だと思います。振付が面白い。コレオもいい。色気があって。
彼にしては珍しく、衣装が派手ですね。
最後、黄色い声援がけっこうな音量で聞こえて来たのでびっくりした。人気あるんですかね。
まあわたしが好きなくらいだから人気あるのか。

ジェイソン・ブラウンはショートに引き続き、楽しそうに滑っていました。
片手を上げた3-1-3きれいだった。似ているわけではないが、系統としてはジョニー・ウィアー。
振付にストーリー性があり、トリスタンもイゾルデも演れる感じですね。
終わったあとのプレゼントの山がすごい。フラワーガールが大変そうだった。

アボットは、フリーの方の曲調・振付が好き。こういうのこそ、彼だとだと思う。
成功したジャンプは美しいが、やっぱり失敗しすぎ。
わりと今回、ショートもフリーも衣装がシンプルですね。

そして町田。
うーん、ショートとフリーを比べたら、ショートの印象の方が格段に強かったなあ。
ベートーベンの第九と聞いた時、なんだか「運命」と勘違いをしてしまい、曲が始まってからしばらくして気づいた。
「運命」で滑るのかと思ってびっくりしましたよ。
でも実際に見てみると「第九」もなかなか難しい曲ですね。
ベートーベンは溜めて溜めて最後解放、という感じの曲だから、解放の前までが地味――抑えてますよね。
フィギュアは最初から華やかな音色の方が合うのではないか。
最後のクライマックスはさすがに盛り上がるんだけどさ。
今後何度も滑るうち、熟成されてくるとまた違うかね。とにもかくにも難しい曲だと感じた。

演技自体はまとめ上げて来ていて偉かった。シーズン初期に合わせてくるのは彼の戦略だろうし、
それを達成するのは偉い。

そして多分今回が本格的な解説デビューの織田信成。

わたしそんなに好きな人じゃないんだけど、解説は相当良かったんじゃないかねえ。
喋ることに実感がこもっていた。感想と解説の理想的な中間。
まあ佐野さんまでにはならなくて良いが(^_^;)。

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