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◆ 奈良・国宝 室生寺の仏たち

仙台市博物館にて8月24日まで展示中。

……例によって、そんな大したもんはこないんではないかと思っていた。
室生寺、といえば女人高野でしょー。五重の塔でしょー。あと知らん。
そりゃ仏像はいいのがあるんだろうけど、そんないいもんが来るはずない。

「東日本大震災復興祈念特別展」と仰々しく銘打ってあるのもかなり気に入らない。
そんな名前を出しているのに、収益の一部を義捐金に回します、なんて文言は見当たらない。
そしてその上、特別展にしても最高額に近い入場料1400円。
なんか気に食わないぞ。

という文句は最初に言っておいて、結論として言えば、素晴らしかった。

他はそうでもないが、何が素晴らしかったってメイン展示室の飾り方。
あれは相当にプロだわ。

仙台市博物館にしては珍しいほど空間をでかく使って、大きな四角い一室。
そこの中央部に、十二神将像を二行×六列で一体一体を独立して飾る。
彼らはランダムな方角を向く。一体ごとのライティングも工夫しており、劇的な光。
観覧者は暗い照明の中、まるで水族館の魚のように十二神将の間を揺らめく。うっすらと漂う伽羅の香。
――もっと人が少なければもっと良かったが。
それほど混んでない日の夕方だったけれども、それがひっそりとした、誰もいないような時なら
大変贅沢な時間になったに違いない。時期的に、もう少し早く行けば良かったけどなあ。

十二神将は、鎌倉時代の仏像。
鎌倉時代らしく力感はあるが、しかし今まで見たことがないような軽やかさ。
その劇的なライティングと相まって、衣が翻り、風を受けているように見える。
すごくかっこいい。

十二神将像、個別のコメントはメモをとってなかったので無いのだが、
……とにかく未神(??羅大将?・アニラ大将。読めませんわ。)のあのお茶目ぶりは一体なんなのだ。
小首を傾げて、おっさんが女子中学生の仕草を真似してるようにしか見えん。
他の像がかっこ良かったり恐かったり、思慮深かったりするように見えるのに、あの一体だけ。

ああいう風に、360度回って見られてこそ、彫刻の真骨頂がわかるね。
見る角度によって全体の表情が全く変わる。
名前忘れたけど、正面から見ると情けない顔なのに、真横から見ると大変いい表情の像もあった。
目が玉眼で、光にあたって金色。表情豊か。

……というか、この十二神将像、アニメキャラみたいなんだわ。そういえば。
けっこうな割合で髪型はサイヤ人。このままアニメになりそう。個性豊かだし。

あとは、同じメイン展示室の壁際にある十一面観音菩薩立像。
ブツのメインはおそらくこれ。国宝だし。
いい仏ではあったけれど、十二神将を見た後だとインパクトがほぼそちらに持っていかれている。
何を見たかな。衣紋の薄さかな。ふっくらした頬の菩薩像。

地蔵立像と、伝文殊菩薩立像と……あと一つメイン展示室にあったな。なんだっけかな。
とにかく十二神将像がぴかいち。これを見に、行く価値はある。
室生寺現地でもこういうライティングはしてない気がするから、けっこう貴重な見物なんじゃないかなあ。

他の展示品は、まあちょぼちょぼといった感じ。
展示室一室を使って、土門拳、三好和義、小川光三などの有名写真家の大きな写真が飾られており、
そういうのを並べて見られる機会ってそうないから、貴重ではあるんだけれど、
実際のブツと一緒に写真を見てもね。
写真が単に説明になってしまうので、写真展なら写真展にした方はいいと思うな。
三好和義も土門拳もいい写真でしたけどね。

今年の冬には奈良に行こうかと心づもりをしている。10年以上行ってないしね。
室生寺に行くかどうかはわからないが……。まあ行けたら。

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