あっさりで地味な映画だと予想していたところ、あっさりだったが別に地味な映画ではなかった。
というより、予想よりある意味では派手。セットとか衣装とかロケ地とか。
まあ全体的には、イギリス歴史もんにありがちな「こんなもんだろう」感が漂うのだが。
でも思ったよりは面白く見た。
何しろヴィクトリア女王が……わたしのイメージは今まで全く違っていた。
珍しいほどの恋愛結婚によって若くして結婚した人らしいし、ヴィクトリア時代は全イギリス史に
おいてももっとも繁栄した時代だから、ヴィクトリアさんの人生は順風満帆で来たんだろうと。
お嬢さんから女王にすんなり進んだ人だと思っていた。
愛情のある、賢い旦那さんにリードされつつの人生だったと。
しかし少女期にああいう風に母親との葛藤があった人生は……困難と言わざるを得ない。
トラウマっちゅうか……けっこうココロに傷が残ると思いますよ。
コンロイが大変憎らしく見えた。ちったあ遠慮せんかい、この間男が!
いけしゃあしゃあと暴力を振るいまくりとはどういうことだ!!
まあお父さん亡くなってるので、間男というわけではないんだろうが。
あー、憎らしい。
頭のいい人だったんだろうなと思えた。
わたしのイメージのヴィクトリア女王は晩年の、煮ても焼いても食えないばあさん然としたあの写真だが、
若いころの肖像画なんか見るとやっぱりキレイな気がする。愛らしい。
エリザベス1世の、これから女形でもやるのかと思うようなおしろい塗りたくりよりはるかに
人間らしくなっている。まあ年代も相当違いますからね。
演じたのはエミリー・ブラントという人。魅力的でした。
しかし、わたしは好きで英国王室物の映画はよく見るけど、いつも不思議に思う。
高貴なる人々を高貴に演じないのはそういう演出意図なのかね?近年は軒並みそうですよねー。
それは、貴族っていっても実際はそうそう気取ってはいないよ、という現実を踏まえた啓蒙活動なのか、
貴族っていってもそうそう気取ってはいないよと思って欲しい、誰かの意図を汲んでいるのか、
高貴に演じられる役者がいないという人材不足なのか。
どれでしょうかね。
みんなに言えることだけど、笑い方とかどうしてあんなに下卑た方向にするんだろう。
普通に「あははははは」と笑わせればいいのに、「ふへへへへへ」という感じで、品がないんではないか。
ルパート・フレンド。こっちはいいお育ちに見えた。
本作では、いいお育ちすぎていまいち影が薄かったか。オーランド・ブルームでも出来そうな役柄。
いや、オーランドではちょっと軽すぎますか。
あんなに愛してるのに(とはいえ、映画では描き方に深みがなかったので、彼らの世紀の愛の部分は、
ストーリーとしてはだいぶ物足りないものだけど。)アルバートが若死にしちゃうのはかわいそうなんだよね。
ヴィクトリアがその後40年も未亡人として生きたことを思うと……。
古今東西、愛のない夫婦は星の数ほどいただろうから、せめて愛のある夫婦は天寿をまっとうさせて
上げて欲しい。
……まあ、ヴィクトリアとアルバートだって、その40年一緒にいたら、愛のある夫婦のままで
いられたかどうかはわかりませんけどね。
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