小説にはそれはそれは種類がある。その中でこの作品は、特異なシチュエーションを書きたい小説。と感じた。
こないだの恩田陸「ドミノ」もそうでしたな。いや、違うか。「ドミノ」は転がるシチュエーションを、
その動きを書きたい小説か。
本作は、……それなりにページターナーではあったんだけど、その“書きたさ”が
若干前面に出すぎている感じで、少々ノレなかった。まあまあ面白かったんだけどもね。
三方向(会計検査院・大阪地域・中学生たち)から書いてるが、そのバランスが微妙に納得出来ない。
作者が一番書きたかったのは大阪地域なんだろうから、ここは素直に幹を大阪地域にして、
枝葉として会計検査院側を書いた方が良かったんじゃないかねえ。
逆にしているから無理が出ている気がする。
タイトルがこれなら、中学生たちをもう少し書かなきゃあかんのではないだろうか。
なーんか落ち着かない。
だってキャラクターとしては間違いなく一番会計検査院の三人が立ってて、それに比べたら大阪側は
……薄いまではいかないけど、やはりヨワイよねえ。
バランスをもう少し吟味してほしい話だと思った。
4分の3くらいまで読んだ時点で、残りの分量がこれなら、竜頭蛇尾に終わる話になるよなあと思った。
そこまでの盛り上げ方に対して、残り4分の1では足りない。
同じくらいの分量で後半部も書かなければ。
案の定、わりと淡々と話が進んだ。あと2つくらいエピソードを盛って欲しかったなあ。
映画はどうだったんだろうね?
小説で気になったそのバランスを、映画では上手く配分出来ただろうか。
だがwikiを見たところ、鳥居君を綾瀬はるかが演じており、それはまさに「鹿男あをによし」の
藤原君の再現になりそうなので、ちょっと見ようとは思わない……
面白かったんだろうか。
大輔役と茶子役も、実際に中学生年齢のキャストがやるにはちょっと難しい役だろうね。
「鹿男あをによし」のドラマ化もけっこう蛮勇だと思ったが、
これの映画化もけっこう蛮勇かな。でもむしろドラマより映画の方がまだいけそうか。
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まあでもこの人、書きたいものがある、という良さはある作家かもしれないね。
2作しか読んでないのであまり言えないけど。日常世界の中における小さなマジックリアリズム世界。
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