予告編にしても、そもそもタイトルからしても、超おバカな映画だろうと思って見に行ったのに……
全然違うじゃないか!良く出来た映画じゃないか!面白かった!
期待値が低かっただけに、すごく満足。近年出色の出来。
いや、まさかこんな絶賛するはめになろうとは……。
なんだろうねー。一番目につく長所は……やっぱりキャスティングってことかなあ。
地味というか微妙に派手というか……でもまあ間違いない顔ぶれだよ。
佐々木蔵之介を信頼して行ったんだけど、出てる全員のキャラが立ってた。
それって大事だよね。7人もおっさんが出てたらただいるだけの人もいそうなのに、
みんなにちゃんと見せ場があった。
そういう意味では、やはり脚本と監督がエライ。
「のぼうの城」が面白くなかったので、城戸賞なるものに過大な期待は抱けないが、
今回の脚本は良かったですよ。無理なく普通に。いい話だった。
佐々木蔵之介が、本当に人に愛される、誠実な人柄に見えた。
そしてわかりやすくかっこいいところはかっこいい。剣の腕がすごいとかね。
お咲に軟膏を塗ってやるところでも、少しでも下心を感じさせたら駄目になるシーンですよ。
そこをほんとに誠実に。実際やってることはあざといくらいの優しさなので、
ここを誠実に演じるのは実はけっこうなハードルな気もするのだけど、誠実に。
いい造型だった。腕が立つだけではなく、なんと腹話術も出来る。
まあ西村雅彦はいつも通り。巧者。
何度も「知恵を!」と言われていてかわいそうだった。
何度目かにそういわれて、またかよ!と思ったら西村雅彦も「またですか……」と言っていて笑った。
でも人間、得意分野で頼られているというのは幸福ですよ。
「のぼうの城」以来、高評価の(←わたしが)上地雄輔は、登場人物の中でただ一人(?)シリアスな役柄。
いや、けっこういい演技だったでしょー。クライマックスのシーンなんか……くううっ。
いい役もらってますよ。そしてそれに負けない演技。まさか上地雄輔に演技の才能があるとは……。
伊原剛志がかっこよかったなあ。天井裏から落ちて登場だし、
最初「あ、間違えた。こっちだ」なんて道を間違ったりするから、
てっきりなんちゃって忍者だと思ったのに、ちゃんとした忍者だったんですね。
これも類型的といえば類型的な造型かもしれんけど、
こうあって欲しい、というところをちゃんと抑えていたなあ。
寺脇康文が、悪目立ちする方向に行きそうな役柄だったにもかかわらず、意外にちゃんと収まっていたのも、
六角精児の料理が得意で、全員丸腰の時に唯一出刃包丁で応戦するのも、
知念侑李というジャニが弓の名手である設定も、
柄本時生が猿の世話係という設定も、
みんな活きてて良かった。ほんのすこーし柄本時生が弱かったかな。でも彼にはあの顔があるから大丈夫。
カメラワークとか丁寧でね。
みんなの顔を映すにも、ロングじゃなくて細かくカット割りしてるし。
田んぼとかの風景も、わりと幾何学的になるように撮ってるし。
衣装の色合いもいいと思ったな。青系の衣装がきれいだった。
汚れていく旅衣がとても汚かった。近づきたくないほど汚く見えた。汚くて正解。
女郎たちの衣装は……わたしにあまり趣味がないせいか、いいとも悪いとも言えない。
最後のお姫様衣装は可愛すぎるくらい可愛かったね。
まあとにかく丁寧に作ってあるよ。その丁寧さが好き。
ちっちゃい伏線を色々張り巡らし、それを丁寧に回収する。今の脚本でそういうことを地道にやるのが
一体どのくらいあるものか。
拝領の脇差、土まみれの小銭、そういうものの使い方が良かったなあ。
そして伏線の最たるものは、本家・平藩の大名行列ですよ。
最初にちょこっと、話だけ出てくることが、ここで生きてくるなんてねえ。
わたしはここで不覚にも泣いた。また甲本雅裕、こういう役柄をやるのにぴったりな役者。
目指せ、笹野高史。
まあまあ言いだし始めたら、アレなところはイロイロありますよ。
関所を通る時はもっと事務方のチェックが厳しいだろうし(紋所だけで決めんやろ)、
忍者さんたちがあまりにもヒヨワ。
どうして老中がたかが弱小藩の参勤をわざわざ待ってなきゃいけないのか。庭先でさ。
最後の江戸城、吉宗辺りの流れは話にだいぶ無理を感じた。ここは残念だった。
が、そういうことはみんな赦せる。笑えて泣けて、みんなが活躍して、いい映画だったもの。
マイルドなハーモニーを感じた。監督は芸術家よりも職人肌かと思われる。
近々テレビで「おかえり、はやぶさ」が放映されるというので楽しみにしている。
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