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◇ 万城目学「鹿男あをによし」

これはドラマを先に見た。そして今回、原作を読んだわけだが、そういう観点で言うと、
「ドラマはだいぶ健闘したんだなー」と。あまり違和感がなかった。
まあ藤原君を綾瀬はるかにしたのはテレビ局の視聴率狙いと感じて、今一つ評価出来ないが、
その方が画面が若干華やかになりますからね。まあ仕方ないのではないかと。

一番違った部分は、原作はほんとに夏目漱石の「坊ちゃん」のパスティーシュなのに対して、
ドラマはその部分がみじんも感じられないこと。まあ不要とは思うけどね。
話の筋立てが十分ファンタジー的にわけわからないのだから、そこに「坊ちゃん要素」なんて
付け加えたら、見てる人がさらに混乱するわ。
キャスティングが上手かった。多部未華子は言う間でもなく、児玉清asリチャードがはまってた。
地味に佐々木蔵之介が良かった気がする。

……いや、これではドラマの話ですな。

小説としてはねえ。うーん、どうだろう、ドラマを見てから読んで、それで面白かった部分はあるかも。
荒唐無稽な筋立てが魅力的だったかというと、わたしはそこまでではなかった。
パスティーシュは、わたしは夏目漱石が好きだから確かにうっすら楽しいんだけど、
パスティーシュ自体が疑問なので、そこはあまり評価したくないなあ。

道具立ては好きだった。神様の話とか、歴史に遡る因縁話とか、三角縁神獣鏡の使い方とかね。
そんな道具立てで現代物の話として書くという意味では成功しているかな。
ただ、日本列島の地震を抑える、とかそういう大規模な話としては、鎮めの方法というのが
異様にせせこましいよね。なんでしがない女子高3校で回せるねん。
話のスケールに合わせるなら、野を越え山を越え、という風になるべきではないのか。
まあそのミスマッチ感も狙ってやってるんだろうけど。

森見登美彦のように、もろ手を上げて称える・好きだという作品ではないなー。
次は「プリンセス・トヨトミ」を読んでみる。これはドラマを見ていないので、
小説だけの勝負。の筈。

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