男子シングルショートプログラム。
まあなんというか……すごいヤツはやっぱりすごいんだね。
すごいヤツのその1。プルシェンコ。
彼はもう生きた化石だと思っていた。
何しろヤグディンと争った人ですよ。ヤグディンはアマチュアスケート界にとっては、
もう歴史的存在といっていいでしょう。なのでプルシェンコもほぼ歴史上の人物。
……っていうか、ソルトレイクがたった12年前だということが納得出来ないんですけど。
もう20年くらいは前のような気がしている。だって当時と今とで、スケートというものが
全く違ったものになってるじゃないですか。
……バンクーバーで、プルシェンコ、銀だったっけ?もうすっかり記憶の彼方。
バンクーバーがたった4年前ということも納得出来ない気がするんだよね。10年くらい前の気が。
年をとると月日の経つのが早くてなあ……。
近年プルシェンコが大会に出たのも見たことがないし、手術したって聞いたし、
まさか一線級の演技が出来るはずがない!と思い込んでいた。
そしたら、……すごいね。やってくるんだね。これほどの大舞台はないという自国開催のオリンピック。
ロシアは代表者選考も難航し、ぶっつけ本番に近い状態だというのに……
ここでやってくるんだからね。ナンデスカ、アンタは?とテレビに向かってツッコんでいた。
演技は、昔通りの力技。粗い。当時は(柔軟性があったから)どっちかというと粗くない人だったけど、
近年の繊細な、隅々にまで神経を使ったプログラムと比べたら精度は相当落ちますよ。
それでも、観客に訴えかける力は強い。……むしろだからこそ観客にストレートに届くのかもしれない。
近年のスケートが失った強さをまだ残す。そういう意味でも化石です。
わたしはやっぱり近年の繊細さを支持する。研ぎ澄ましてきた表現力、表情、音の拾い方、
そういうのが欲しいと思うから。跳んで滑るだけでは、美しさは生まれないと思っているから。
だがプルシェンコの大きな才能による強さは、そういう繊細さと肩を並べる。
それもまた美しい。彼の負けん気と、躍動する(31歳)の肉体。
――前に、たしかミッツ・マングローブだか誰かが、
「フィギュアスケートはその選手の人生を見せてくれる」と言ったんだよ。
彼の人生が表れている。今回の団体戦ショートプログラムはそんな滑りだった。
すごいヤツその2。羽生結弦。
プルシェンコについて熱く語った後では、ユヅルについての言及は大変あっさりしたものに
なってしまうのだけど……しかし彼も良かった。素晴らしい。
彼の素晴らしい滑りは何度も見てる。その度に素晴らしいと思うので、今回がベストかはわからない。
しかし今回の気合いと冷静さのバランスは良かったね。自由に滑っている印象がある。
無理のない状態で。気負わず。
かっこいいったらないよ。ミーハーに「ユヅル、かっこいい!!」と黄色い声を張り上げたいと思った。
――いや、せっかくなので張り上げてみよう。ユヅル!かっこいいぞ!
まだ未成年のくせに、オトナの余裕が感じられる雰囲気。
あとは……
パトリック・チャンは珍しい取りこぼし、閻涵はなかなか良くって、アモディオもけっこういい。
団体戦ってのはいい感じに力が抜けるのかもね。まあ一回目だし、去年までは春にお祭り騒ぎとして
やってきたんだから、そこまでガチガチにならなくても済むのかも。
そう考えればいい練習なのかなあ。わたしはあんまり団体戦、賛成ではないんだけど。
ジェレミー・アボットは、結果は出てなかったけど、やっぱり彼の滑りには独特の世界があって
(近年“世界観”が安売りされてるけど、ほとんどの場合、正しくは“世界”を使うべき状況だと思う。)
わたしは大変評価している。彼はプロになったらさらに輝くだろう。
そしてまあとにかくわたしが一番印象的だったのは、
……イタリアのパーキンソンのおっさんくささだ。
顔だけ見てるとそうでもないが、体型と衣装と動きが大変におっさんくさい。
見れば見るほどその辺のおっさんにしか見えなくて困った。邪念が入る。
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ペアショート。
高橋木原ががんばった。8位なんて大健闘だよ!……ちょっと政治力が働いたか?と思わないでもないけど。
なんぼか、はっきりとはわからないほどなんぼか、前より上手くなっている気がする。
しかしペアになって1年ってことを考えれば大健闘。しかも木原は元々シングルの選手で、
シングルで培って来たものを一度白紙にして覚え直しだから、さらに難しいことをしているんだと思う。
高橋成美が「上の選手とはまだまだ差があるので」と言っていた。
そんな台詞を言えること自体、実力がついてきた証拠じゃないですか。
本人に手ごたえがあるんだろう。頼もしいよ。
ただスケートのスピード自体をもっと上げて欲しいところだ。
それが出来れば、ツイストもスロージャンプももっと出来るようになる部分があると思うんだよ。
やっぱりボロソジャートランコフは雰囲気があるなあ。ドラマチックだ。
2人が並んでるだけでドラマチック。今回の衣装がすごく劇的でいい。
ロシアはクラシックスタイルが似合うね。伝統的にね。
スケートを見てるというよりも、ドラマを見てる気分になる。
もう一組、アクロバティックで個性的な振付ですごく良かったと感じたペアがあったのだが……忘れた。
あんまり耳慣れない名前だった気がするのだが……誰だっけ?
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珍しく、もしかして初めて?くらい珍しく、開会式も見た。
開会式も言おうと思えば色々ごちゃごちゃと言いたいことはあるんだけど、割愛。
しかしロシアは(というより今回の責任者は、というべきか?)映像の作り方は上手いね。
少々長くてダレたところや意図が若干疑問なシーンもあったが。
ああいうコスチュームプレイ物があのクオリティで出来るのなら、ロシアは歴史物映画を
ガンガン作れ!と言いたいぞ。もちろんイッパイ作ってるんだろうけど、
おそらく重厚長大になり過ぎる傾向なんだろうから、全世界的にウケない。
もっとケイハクなもんを作ってみるといいのではないか。
今回プロジェクションマッピングを存分に活用していて、ぐっと表現の幅が広がったね。
ここ数年でしょう、あちこちで使うようになったの。違うのかな?
これはもう今後ガンガン使われる技術だろう。いいねえ。
わたしが一番お気に入りだったのは、クジラのシーン~大道芸人のダンスあたり。
色彩に溢れててとても楽しかった。
ピョートル時代の表現も、軍隊の進行と映像の組み合わせ方が大変面白かった。
「戦争と平和」部分は少し長すぎたね。まあ世界に誇るロシアバレエを見せたかったんだろうけど。
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そして、佐藤有香さんとジェレミー・アボットがずっと手を繋いでたのが気になる……
普通手を繋がない状況で繋いでいた気がして。
この2人は数年前にも「ん?」と思ったことがあって、――まあいいんですけれども。
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