どうかなーと思いながら見に行ったが、予想通り程度。さくさく見て来た。
30分ちょっとくらいかな。まあこちらの体調も不良で、責任の半分はこっちにあるが……
シャガールがいろんなことをやっていた人だというのはわかった。
オペラ座の怪人……もとい、オペラ座の天井画はまあ普通だとして、バレエの衣装デザインを
やっていたのは初耳。今回、この衣装がマネキンに着せられて展示されていたのは
画家のエキシビとしては珍しかった。
正直デザイン自体はなんかスゴイ感じだった。画面の中でちゃんと動いているのを映像で見ると
それほど気にならないが、マネキンの状態で見ると「ふざけてるのか?」と言いたくなるような。
まあいいけどさ。
点数はかなり来ていたけども……どうだろうねえ、オペラ座天井画の下絵から展示が始まるのは。
デッサンとか下絵は、その性質上ガツンとした迫力に欠ける。
素人としては、もう少し入り込みやすいところから始めて欲しい気がするが。
それともあっさりと導入し、だんだん濃い系に以降する方が見やすいのかなあ?
まあ入口は人が混みやすいところだから、むしろそれを考えればまあいいのか。
うーん。
ちょこちょこメモしてきた絵はあるんだけど、ほんとに一言だけで、あえて言及したいと思うのは
ほとんどないなー。絵では1枚だろうか。
「預言者エレミア」
人間を二次元的な薄さでしか描かないシャガールが、珍しく三次元の厚みを感じさせる人物を描いた。
エレミアの実在感がとても珍しい。人物を常に浮遊させる、肖像として描かないシャガール。
初めてかもしれない。血が流れていることを感じさせる人物。
まあそれでも全身黄色に塗られているんですけど。
ぎりぎり何とかもう1枚。
「パリの空に花」
定番の、花嫁と花婿。パリの上空を飛ぶ。こういう絵がシャガールという気がする。かわいい。
しかし、右下のとってつけたような人物は、あれは何なんですかね?
今回少し目に止まったのは、彼の彫刻作品。
「聖書の女性 サラとリベカ」
「聖書の女性 ラケルとレア」
白い大理石のレリーフ。シャガールの絵がそのまま彫りこまれた感じで、意外性もあまりないが……
しかし色彩なしでもなんかいい感じでした。線の柔らかさが活きる感じかな。
「自画像」
これなんか、元の石の形を活かした、ほんとに素人くさい作品なんだけど……
やはりこれも線かな。柔らかく、躍動する線。まあ数ある中で目に止まる作品かっていうと
全くそうでもないが、シャガールの自画像と書いてあるのでそうだと思って見るとちょっといい。
今回一番長く見たのがこれだ。大理石もきれいだしね。
「恋人たちとヤギ(横たわる恋人たち)」
これはいつもの画題。これは可愛い。一番素人っぽくない作品だったかな。
大理石って本当にきれいな素材なのねえ。
しかし大理石彫刻の素人くささに対して、それぞれ石膏とブロンズで作った
「空想の動物(ロバ/空想の動物」の2体は驚愕の(?)達者さ。
これは歪みなく、左右対称的で、換言すればシャガールっぽくない。
シャガールというより、普通に現代彫刻としていい感じ。まともすぎてインパクトはないが。
わたしはずっと前、シャガール展に行ってわりと楽しんできた印象があるんだけどな。
たしかそれは、画家の初期の作品が多かった気がする。わたしはその辺の絵が好きだった。
まだ自由奔放な線と色で描く前の、もう少しスタンダード寄りの。
今回は来た作品の時代がだいぶ後期に寄っている。ここらへんも嫌いまでではなく、
好きなのもあったけど、「ああ、いつものシャガールね」くらいにしか思えないのが
カナシイところだ。
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そして30分ちょっと見て帰ろうと思ったところ。
常設展。いつも見てるから見たり見なかったりしているが、まあ入れ替えもそれなりにしてるし、
今回は本来の目的であるシャガール展が今一つだったので常設展も見てみた。
カンディンスキーとクレーの小版画が並ぶのはいつものことだが、
その続きでしらっと並んでいたバウハウス派、その中のヨハネス・イッテン、ゲルハルト・マルクスが
良かった。2枚ずつしかなかったんだけれども。
ヨハネス・イッテンの「箴言」。タイトルとは全く違って、かわいいポストカードみたいな画面構成。
色合いも、他のリトグラフが黒一色なのにこれだけパステル調の多色使い。可愛かった。
ゲルハルト・マルクスは「猫」が可愛い。温かみがあって、少し大人な味が添えられて。ちょっと毒。
絵本の挿絵にしたいような絵だった。
そして、初めて見たが、けっこういい日本画を持っていたんですねえ!
川端龍子「和暖」
二曲一双の屏風。紺地に金泥一色で、左に萩、右に山吹を描いている。
山吹に惹かれたわー。葉っぱの先端の鋭さと、茎のラインが素敵。しばらく眺めていた。
これをジョー・プライスさんが見たら買うだろうと思ったり、いやでも少し印象が暗いから、
彼の好みではないかなと思ったり。
そうね。本来の室内装飾としてみれば暗いね。少し。沈んだ金泥で描いていて、
その沈んだ暗さも価値なんだけど、日常置いて使うなら、寂しい気分になってしまうと思う。
しかしこれは良かった。また見に行こう。
荘司福「石」「史」
石だけどん!と描いた二作品。どんだけ石への偏愛、と思うと少し可笑しい。
「石」の方は背景も白で、雪の中の石かと思う。「史」の方は背景がいい色のベージュで、
夕暮れ手前のおぼろな雰囲気。幸せそうにうずくまっている。
幸せにうずくまる石。なんかうらやましい。
太田聴雨「散るもみぢ」
おじいさんの坐像ともみじが描かれていて、そうなると主役はやっぱりおじいさんの肖像になるのだが、
でもタイトル通りもみじがいい。赤と緑の混淆が。自然界で生まれる色のバランス。
むしろ人物を入れずに、もみじだけで構成してほしかったなー。
今見たいのはキレイな色の日本画な気がする。
ロサンゼルス市立美術館が近くにあったらいいのになあ。
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