蝉声盛んなる午後、ようやく行って来ました。
8月25日まで仙台市博物館で開催中。
そこそこ期待して行って、ちょうど期待値通り、といった内容でした。
仏像と言えば京都・奈良だけに固まっている気がするけど、近江も意外に仏像エリアらしい。
――ということはうっすら聞きかじっていたのだが、あまり認識したことはなかった。
わたしの滋賀県についてのイメージは、琵琶湖・鳥人間コンテスト・大津京くらいしかない。
なので、今回のエキシビは蒙を啓いてくれそうな気がして楽しみにしていた。
まあまあいいブツが来てましたよ。
ブツのなかでのブツでまず指を折るのが、大日寺の薬師如来坐像。
けっこう大きく、おそらく等身大くらいかと思われる。
顔の造型が、唇厚く鼻広く、黒人種のイメージ。クセのある造型だが、それゆえに見入る。
荘厳寺の釈迦立像。
手がとても小さく、体と顔のバランスも悪い。しかし衣紋の線はとてもかっちりとしていてきれい。
玉眼がずれているのかなんなのか、左目に光っている部分があって涙に見える。
洞照寺の阿弥陀如来坐像。
平泉の丈六仏をなぜか思い出した。顔は相当違うし、光背は全く違うのだが、
体躯に似通うところがある気がする。丈六仏ほど大きくはなかったけど。
絵では、個人蔵の「日吉山王祭礼図」。
キレイに丁寧に描いていて、プライスコレクションの「源氏物語図屏風」の緻密さを連想した。
町屋の窓から囲炉裏が見えていて、薬缶?がかかっているところなんか細かいよね。
海北友松「東王父西王母図」。
人物部分はぴんとこなかったが、梅の枝ぶりの強弱にインパクトがあった。
むしろ人物部分でその勢いを殺している気も……
そして、特別お気に入りが2つ。
神照寺の「透彫華籠」。
HPに載っているが、塗金の繊細な花籠。花籠っていってイメージできる外見ではないけど。
ではどんなもんか、と言われると困る。皿型といえばいいのか。
光が当たったところの金色がとてもきれい。手仕事の技術としては、舌を巻くほど超絶ではなく、
そこが落ち着いた手仕事の良さを感じさせる。こちらに緊張を強いるような鋭さはなく。
しかし十分に繊細で。これは欲しいと思った。
山本梅逸「寒華傲雪図」
これは、色のバランスがとても可愛い!灰色の雪景色に、ところどころに入った椿の紅色。
南天の赤もちょっとだけあって。そして梅の蕾は水色。
見間違いかと思うほど、わずかに緑みを帯びた竹。
今、絵はがきで見ると、ほんのちょっとだけ黄色もあったようだ。
わりあいごちゃごちゃした画面だけれども、ふと見ると梅の木に小鳥が寄り添って止まってたりして、
こんなところに、というだまし絵的な感覚もある。これも欲しい。
……ものすごく心を打たれた一品、というのはなかったんだけどさ。
やっぱりブツは、自分の足で歩いて、その風景の中で見るのが一番いいんだろう。
いつか近江にも行こうと思う。ピーチ航空が出来たことだし。
しかし今回の仏像は俯きがちのものが多かったのか、しゃがんで見なければと思うものが多かったなあ。
展示を、もう少し高くして欲しいものだ。人それぞれ好適な位置は違うだろうけどさ。
そして、先週図書館で借りて来た「白洲正子全集」の第6巻の後半は「近江山河抄」だったのであった。
前半部分を読み終わって、突然「近江山河抄」と出てきた時には、その共時性にびっくり。
でも白洲正子の紀行文は、その流れにさらさら乗ってしまって、
「その場所」「その仏像」についての印象はむしろ残らない。
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