……一体何が悲しゅうて、わざわざ金をかけてこんなボロボロなドラマを作らなならん!?
怒髪衝天。
わたしは平泉が好きで、もう10年くらい前だけれども、関連本を相当あさったんだよ。
その過程で、蝦夷関係の本もそれなりに読んだ。
阿弖流為は平泉藤原氏よりもだいぶ前だから、それほど詳しく見たわけではないが、
アザマロなんかと同じく、本にはちょこちょこ出てくる。
何より。
ドラマの始まる直前、たまたま「火怨」を読んだんだよね。
ほんと、読み始めるのと同時にテレビCMが始まったくらいのタイミング。
そのタイムリーぶりに驚いたくらい。
そういう状態で見ると、このドラマは一体何を考えて……というレベル。
ドラマや映画を見ては毎回同じことを言っているが、こんな話を作るなら、
どうしてこの原作を持ってこなければならなかったかね?全然違う話やないか。
やっつけ感ありあり。東北関連で時代劇でてきとーなもの、という観点から
それっぽいものを探して、それっぽく作ってみました程度。
そもそも45分ドラマの全4回と聞いた時から、失敗は予感されていた。
その尺で描ける内容ではないよなあ……。でももしかして、どこかをうまくクローズアップして
(たとえば阿弖流為と坂上田村麻呂との関係性とか)作れば、見られるものになる可能性もある。
その程度の期待で見たところ(つまり期待値は決して高くはなかった)、
……は?ナニコレ?
まさか現代から話を始めるとは思わなかったね!!呆れかえる。
蛇足もいいところですな。ただでさえ時間が足りないというのに、最初と最後にコレくっつけて
更に時間を減らそうというのは一体何のコンタンなのか。
視聴者は幼稚園児じゃないんだから、「おらほの町には昔こんな立派な人がいての~」とか
わざわざ言わなくてもわかるから!っていうか、そんなことを言う暇があるなら、
立派な人がどのように立派かをちゃんと描け!
全体を通して、上っ面だけの話になっているのが一番の問題。
1+1は2である、ということを言っているだけじゃだめで、1+1は2であることを
実感させてくれるのが脚本というものだろう。説明だけを超特急で見せられても、
芝居の醍醐味は味わえない。
例えて言えば、カレーを作るのに玉ねぎと人参とじゃがいもと肉とルーを揃えたはいいが、
火を入れてない、というような。――煮ろよ!!生では食えたもんじゃねーだろ。
ほとんど全てに、描き方が短く浅いので、本当にストレスが溜まりました。
一話の後半は耐えられずに倍速で見た。
その上、このドラマは玉ねぎとか人参とか、そういう定番で作られておらず、
わざわざ長ネギと大根とチクワとモヤシで作っているきらいがあるからなー。
カレー粉が入っていればカレーだ、と作り手側は主張したいのかもしれないが、
果たして長ネギと大根とチクワとモヤシのカレーを食べたいか?
原作は兄妹なんて(こういう立場では)全く出てこないの。兄のために、妹のために、という話にすると、
大和と蝦夷の長年の歴史が矮小化するんだよ。
しかも兄が都に連れて行かれて、坂上田村麻呂の従者になったりするんでしょう?
なんでそんなに長ネギを入れたいかね?
お父さんの描き方も変だった。ずいぶんと惑いがちな人に描かれている。
人間だから惑うのもアリだと思うが、その惑い方が浅い。
族長としての威厳も智慧も感じない。なんでこんなチクワを……
道嶋一族が牡鹿郡出身なら、単に大和側として描くだけでは足りないはずなのに、
そういう道嶋一族の微妙な立ち位置に全く触れてない。
ああいう底の浅いイジメを展開する役割なら、もっとはっきり大和側の人の方が良かったのに。
馬は蝦夷側に描いていて欲しかったぞ……。信濃には詳しくないので、信濃の大伴氏の立場は知らないが、
蝦夷と馬は切っても切れないもので、その馬の管理を余所者が一手に引き受けてるような
描き方は違和感がある。わざわざ大伴氏を持ってくるなら、(高橋克彦の独自見解である)
物部氏じゃなぜいけなかったかね?
この辺は細部っちゃ細部だが、作り手の力量は細部にあるのだ!
第2話も苦痛を堪えて、見ようと思ったんだけどね……
実に表層的に、あっさりアザマロが死んでしまうところと、お兄さんが安易に
坂上田村麻呂に召し抱えられるところを見て、「……無理」と思い、視聴中止を決定しました。
紙芝居じゃないんだから。
まだこれがオリジナルなら、見続けられたのかもしれないが、
原作を「火怨」と謳った上でこれであれば苦痛でしかないからね。
なんでオリジナルとしてのドラマじゃダメだったのかね?
阿弖流為なんて、正史にはちょこっとしか出てこないんだから、ある程度自由に書いても許されるのに。
大和と蝦夷の関係性を丁寧に説明し、その上で坂上田村麻呂との話だけにしとけば
十分180分で行けるでしょうに。
そこで、「火怨」とつけて、大伴だの兄妹だの長ネギを持って来て、火を通してないから
なんだこれは、という話になるわけで。
まあ一話を見た限りでのいいところと言えば、大沢たかおの笑顔が爽やかだった、ということくらい。
あんまりちゃんと見たことのない俳優で、顔はそんなに好みじゃないけど、
少年の雰囲気を出していたのはがんばっていたと思う。実年齢40代半ばですもんねー。
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実はね。原作もそう面白くはなかったの。
まあこれはわたしの方の原因もある。
熊谷達也の「まほろばの疾風(かぜ)」「荒蝦夷」と「火怨」を続けて読んでしまったので。
全部阿弖流為の話。さすがに3作続くと飽きます。
前二者は熊谷達也作品。
たしか「まほろばの疾風」は母礼が女性で。そして「荒蝦夷」は母礼は普通に男性だから、
同じテーマでここまで設定を変えてくるのは少々節操がないと感じたなー。
歴史物はあんまり奇をてらわない方が好きだ。
高橋克彦も基本、独自見解多い人だし、主人公贔屓が強い人。
まあでも蝦夷を書かせたら、やはり一番ポピュラーな人じゃないかなー。
しかしそれほど面白いとは思わなかった。
蝦夷側がみんないい人過ぎたかな……。わたしはいい人のいい話は好きなんだけど、
この話は少し行きすぎのように思う。
高橋克彦はとてもトンデモな感じの「竜の柩」が一番面白かったね。
彼の歴史物は、悪くはないけどなんかノレない。
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