小川洋子は「主人公のティフォージュが“担ぎ”の意味を知っていく物語」と言っているし、
本の裏表紙の要約には「幻想的戦争小説」と書いてあるんだけど、
わたしに言わせれば、そんな大層なテーマではなく。……これは、フェチの小説ではないのか。
三日月の光った部分と闇の部分のように、この本では好きな部分と嫌いな部分がはっきり分かれた。
文章は全体的に端正で好み。訳者お手柄。
内容の幻想的な部分は好きだった。戦争のパートも、読んでて美しく感じるところはあったんだよ。
だが、人間の生理的な部分への言及と少年少女への偏愛は――その偏愛は
表出されている限りにおいてはぎりぎりで美しくなっているけれど――ちょっと受け付けない。
ナマナマしいの苦手。こういった内容においてなら、これでも比較的ナマナマしくない方だと思うが、
わたしはもうちょっとキレイゴトで書いてくれた方が嬉しかった。
全部キレイゴトで書いてくれたら、かなり好きになった部類だと思うが……
微妙なラインでナマナマしく。
幻想的戦争文学というなら、前半部、もう少しはしょってくれてもいい気がする。
ラスト部分は美しかったと思う。わりとなだれこんだ感じではあったけれども。
「フライデー あるいは太平洋の冥界」よりは自分に近しく感じた。
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その後、かなり童話っぽい「親指小僧の冒険」も読んだ。
これはけっこう好きだったなー。童話に適度な大人の風味があり、安心して読める。
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