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< ホビット 思いがけない冒険 >

3時間は時々飽きる。それでもなお良作だと思う。

原作は未読だけれども、「指輪物語」よりだいぶ短いのは事実だし、対象年齢も下なようだから、
それを指輪と同じ3部作でというのは無理があるのではないかと思っていた。
(「指輪」は、3部作で作るのは詰め込み&削りまくりだが)せめて前後編ではないかと。
しかし映画を見ながら気付いた。これは3部作くらいやらないと……モトが取れなかろう。

ま~~~~~前回同様、映像がすごいね。これはむしろ映像特化作品として見るべきだね。
話は、まだ1作目のせいもあり、状況説明からそれほど出ていない。
ストーリーに面白さを感じる映画にはなっていない。
だが、映像は相変わらずすごい。やはりピーター・ジャクソン。

ピーター・ジャクソンは、自分の作りたいものがはっきりわかっているおそらくは稀有の監督。
ちっちゃい規模の映画なら、現物が見えていて、それをきっちり作る監督は多くいそうだが、
規模がでかくなればなるほど取りこぼしも増える。
練り込みが足りなかったり、紋切型で流しちゃったり。
この映画はそういう部分がほとんど感じられない。

まあね。前作と同工異曲という部分は若干あるよ。
でもそれは同じ世界で前日譚を描くんだから、仕方ないというか当然のことだろうなあ。
元々、見る側にはその辺の不満はないと思う。「ロード・オブ・ザ・リング」の世界が好きな人が
今回も見に行っているんだろうから。
むしろ、なつかしい中の国が帰って来た!というヨロコビが強い。

そう、あのなつかしい中の国が帰って来た!ですよ。
ホビトンのあののどかな風景……。見ているだけで幸せになるような。もっとたっぷり見せてよ。
今回は、家の中はわりと長く映してたけど、外が足りなかったねー。
さすがに今回はホビトン、そこまで作りこまなかったのかな?

ピーター・ジャクソンはそれでも色々サービスしている方だと思うけどね。
サックビル=バギンズに言及したり。いやその前に!イライジャ・ウッドasフロドを見せてくれる。
なければないで作れただろうに、そしてこれだけのシーンでけっこう金もかかるだろうに、
前作のフロドとビルボを引っ張ってくるのがアリガタイ。

でも実は、このシーンって前作のカットシーン?とちょっと疑った。
だってイライジャ・ウッドが前作そのまま!変わらなさすぎ!
アップだとまた違ったのか?10年経ってるのに。

あと少々疑問なんだけど、あのシーンってビルボが消えるあのパーティの当日のこと?
フロドが本を持って村はずれまでガンダルフを待ちぶせに行くんだからそうだよね?
そうすると、作品中の「ホビット」って、まさに失踪直前から書き始められたの?
もっと前から書いていたイメージなんだが。
そうすると、ビルボはどこでフロドに完成品を渡すつもりだったんだろう。

イライジャ・ウッドのそのままぶりに対して、イアン・マッケランはさすがに老けましたな。
まあそりゃ老けるわなー。10年ですもん。ワタシは5、6年前の感覚でいたのだが。
でも彼が演じてくれて嬉しいよ。これで役者が変わっていたら、どれだけがっかりしたことか。

しかしその10年でも、クリストファー・リー御大はご健在(^_^;)。
この人、出てくるたびに「あ、また出てる!」と驚くわ。
だって10年前だって、この撮影をこの年でやるか!という高齢でしたよ。
wikiを見てみたら、この人のこの10年の出演作品、わたしは半分くらい見てる。
彼を追って見ているわけではないが、わりと被るんだな。傾向が。

ビルボをやったマーティン・フリーマン。
「ラブ・アクチュアリー」での役をかろうじて覚えているけれど、個別認識としては
こないだテレビでやったBBCの「シャーロック」のワトソンが初。
ワトソンはわりと冴えない普通のおっさんだったので、この壮大な物語の主役を張れる華があるのかと
大変不安でした。

そうしたらこの映画では大変華やかで……ということはむろんなく、地味なまま。
しかしその地味さが良かった。むしろイアン・ホルムasビルボの年とってからの
調子のいい目立ちたがりより、この地味で素朴な感じのビルボが好きだわ。
ゴラムへの憐みの眼差しなんか、すごく良かったよね。
ピーター・ジャクソンは、中どころの材料を取りそろえ、料理をするのがすごく上手いなあ。

不安と言えば、今作ではおっさんばっかりが出てくるので、
基本的におっさんの区別がつかないわたしは、飽きずに見られるか危ぶんでいました。
だって今回、旅の仲間が15人だよ!みんなおっさんだよ!
しかも大多数がドワーフで、みんなずんぐりしていて髭面なんだよ!

どないすんねん。……と思ったら、実は、一人ひとりの区別がつかなくても大丈夫な話でした。
実際、ドワーフ13人のうち顔と名前が一致するのは、バーリン(全面白髭白髪)と
キーリ(唯一若くてイケメン)、かろうじてトーリン(この人、ビルボより主役なんだが……)のみ。
でも他のドワーフは名前を覚えなくても、区別がつかなくてもそれほど支障ない。
細かい設定は、あとでパンフレットを読んで初めてわかった。

この辺もピーター・ジャクソンを褒めたいかなあ。
原作でどうなっているか知らんけれども、こういう場合、一応みんなを紹介というか、
説明したくなるものじゃないですか。
でもそれをしない。いや、観察力と記憶力に優れた人にはそれなりに情報を与えているのだが
(それもパンフレットを読んで初めて知った)わたしのように、ぼーっと見ている人も困らない。
集団として認識出来ていればいいという程度。この部分、大変ありがたかった。

リチャード・アーミティッジasトーリンは初。
比べれば、ヴィゴ・モーテンセンasアラゴルンの方がかっこいいか……。
いや、アラゴルンは話的にアルウェンもいるし、華があるからな。トーリンはひたすら男くさい。
まあそういう理由もあるだろう。
あと、エルフに対する敵意の由来はちゃんと描けていたけど、周りの人はみなビルボを受け入れてるのに、
彼ひとりだけがビルボを排斥する人になっているのがあまり納得できなかった。
そんな器が小さいことで王たることが出来るのか?と少々描き方が疑問だ。

あとは……奥方は相変わらずお美しい。
ケイト・ブランシェットは神々しいばかりに美しいよ。見とれるしかできない。
おっさんばかりの今作において、唯一の女性。目とココロの潤い。アリガタイ。

ヒューゴ・ウィービングも変わってないねえ。
まあ美しいかっていうと……前作の時から「コレは美しい系ではないのではないか……」という
疑問が去らなかったわけだが。わりと不思議なキャスティングだった。

そして、待ってました、アンディ・サーキス。
画面では全く出てこないわけだけど、しかしスクリーンの向こうで相変わらず熱演しているんだろうな。
その姿を思いながら見ていた。
最後、エンドロールを見ていたら、2ND UNIT DIRECTORとして
ANDY SERKISという名前があったので、へ?なんで?と思ったのだが、
今回、第2班の監督もしているんだって。いいねえ。才能を使う場があって。
そういう使い方をするピーター・ジャクソンも好きだ。

……そして長くなりすぎたので、たかが映画の感想で、まさかの後編へ続く(^_^;)。

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