やはり出来るな、国書刊行会。
と言いたくなる良書でした。
国書刊行会は、知る人ぞ知る秘密結社――ではなく、一応普通の出版社っぽいんですが、
それでも他とは違った毛色を感じる。この辺、どうなんですか、詳しい方!
わたしの場合、出会いが「山尾悠子作品集成」だったのは大きいな。
こんな本を作る会社は……よっぽど物好きでなきゃ出来ないと思った。
山尾悠子は(当初は単に古田敦也ファンブログだった)このブログに
読書感想文を持ち込ませた張本人だ。「山尾悠子作品集成」を読まなかったら、
読書感想文を書きたいという熱情は生まれなかった。
彼女は「凄い」作家だと思いました。――だが一般向けに平積みになる作家ではない。
ベストセラーにはならん。(と、言い切る。)
だがこの世の中に山尾悠子なかりせば、少なくとも幻想文学世界の神秘の一粒は確実に崩れる。
それをわたしに読ませてくれた国書刊行会は、大変アリガタイ会社です。
そういう意味ではこの本も(山尾悠子とはだいぶ持ち上げ方が違うけれども)、
読ませてくれてありがとう、と言いたい良書。
わりとね。中身は軽めなんですよ。映画の批評。批評というよりももっと気軽な、あっさりした感想風。
書き手はイギリス演劇の研究者だそうだから、一般人よりは地力が違うと思われるけれど、
そこが重くも嫌味にもならず。自然体が魅力。
研究者の“くせに”対象が大好きだと素直に表現出来る。これはなかなか見かけないことで、
本人にも読み手にも幸せなことだと思いますね。
しかしこの本、気軽な内容には全くそぐわない550ページ超、小さ目活字2段組み。
これは本当なら、200ページちょっとくらいの、わりとあっさりした組みで読みやすく、
キレイカワイイ表紙をつけて売るべき本。
だがやっぱり国書刊行会が出すような本だから、みっしりどっしりですよ。
内容はこんなに読みやすいのに、何しろ文章量自体が多いもんだから、
持ち歩き読みで1週間弱かかった。こんな重い本の1週間持ち歩きはメーワクです。
だが、わたしが読みたいのはこういうレベルの本ですよ。
今どきの新書の、タイトルと目次にいくらか本文がついただけというぺらっぺらの本じゃなく。
値段も4500円と相当で、そういう意味では図書館にも大変お世話になっているが、
ありがとうございます。こういうものを出してくれて。
この本について語るよりは国書刊行会について語ってしまったが。
今後もよろしくお願いしたいです。
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