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◇ 米沢穂信「愚者のエンドロール」

これは古典部シリーズの2作目。一作目の「氷菓」でも感じたことだけど、
……少し設定を無理しすぎじゃないかね、ヨネザワさん?

「氷菓」を読み終わったところで感じたことは、小鳩君と小佐内さんシリーズの前段階だな、ということ。
主人公の性格が相当にかぶる。小佐内さんに該当する人は出てこないけど。
正直、どっちかだけで十分な感じのシリーズだ。そしてどっちかを選ぶのならば、
高校生という設定とストーリーの流れにそれほど無理のない(無理ありまくりという意見もある)
そして小佐内さんのキャラが魅力的な、小鳩君と小佐内さんシリーズの方を推す。

謎解き部分は、枝葉末節にこだわっているそのチマチマ感がわりと好きなんだけどねえ。
(この些末さがキライな人もいるだろうけど)
でも、高校が舞台で、謎解きがチマチマで、……それなのに結論を
変に過大に持って来たがるところに疑問を感じる。
もっとちっちゃい話でいいと思うよ、ヨネザワさん。

「氷菓」でいうなら、挫折させられた人生の話にしなくても、叔父さんが明朗に
「そんなこともあったな」と笑うような話に出来たはずだし、
「愚者のエンドロール」でいうなら、女帝だの、主人公のアイデンティティの話にしなくても、
(女帝のキャラは魅力的だが)もっと軽いノリの方がふさわしい。

軽いノリの話であるべき骨格で、大仰に書いちゃってる、と感じられてその辺が居心地が悪い。
小鳩君と小佐内さんの方は、その大仰さがぎりぎり抑えられているので、
(むしろ大仰さが、狙ったユーモアに見えているので)いいんだけれども。

とにかく本作は話に無理がありすぎ。
あの状況をああいう理由で、推理で解決という方向には絶対ならない。
人間の“普通”を無視している。
まあミステリは、特に日常の謎系のミステリは、“普通”だけでは絶対成り立たないけどね。
でも本作は、たとえて言えば、新宿から品川へ行くのに、わざわざ千葉を通って行くというような
迂遠さがあるので、眉をひそめたくなる。

でも多分、この辺の作品はまだ書き始めだろうから、
ミステリとは事件でなければならない、と思い込んだりしていたんだろうね。
それが少しこなれて小鳩くんたちの話になっていったんだと思う。
なので、これを乗り切れば、あとは気にならないはずだ。

わたしとしては、ちょっと残念な2冊。

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今の売り上げランキングがけっこう伸びてるが、アニメ化の影響なのか。
わたしは米澤穂信の他作品は評価するが、このシリーズは評価できない。
その後、3作目の「クドリャフカの順番」も読んだが、設定の無理さ加減は変わってなかった。

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