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< クレオパトラ >(テレビ視聴)

エリザベス・テイラー主演。レックス・ハリソン共演。

以前に一度、やはり録画して見たことがあるのだが……
その時は全然根気が続かずに、途中で挫折してしまった。
今回は4時間超の映画を無理せず1時間くらいずつ見て、
そこそこ面白いやん、という感想になりました。

クレオパトラの人生は、教科書的に要約すると10行くらいで終わってしまう気がするので、
映画もその程度で描いているのかな、となんとなく思っていた。
そしたら意外に話が丁寧だった。丁寧すぎて、テンポが悪いと感じるところも多々あったが。

絨毯から転がり出してから、カエサルと寝るまで長い長い。
その間に主に描かれるのは、エジプト女王としてのクレオパトラと、
ローマ共和国のリーダーとしてのカエサルの面子争い。
政治状況を過不足なく描いたとは言いにくいが(映画でその辺を説明するのは無理)、
昔の、しかもハリウッド製超大作にしてはマジメだなあと思った。

御大レックス・ハリソンが素敵。
……というても、他にわたしは「マイ・フェア・レディ」のヒギンズ教授しか知らんが。
彼はねー。声が高すぎるけどねー。まあ黙殺出来る。
カエサルだったらだいぶ勿体ぶった役柄になりそうなのに、軽めに演じて不満は感じなかった。

だがこの映画では、カエサルはむしろ前座です。
映画「クレオパトラ」というより「アントニーとクレオパトラ」といった方が近いかも。
こってりした味があったのは、カエサル亡き後のアントニウスとの関係。

アントニウスなんてーのは、カエサルと比べたら小者も小者でしょう。
まあ良いところといえば、軍才があるってことくらいでね……。あと忠誠心と。
頭も政治力も足りない。腹芸も出来ない。
後世から見ればそんな程度の男なので、わたしは、クレオパトラは、
しょうがなく次善の策としてアントニウスに接近しただけだと思っていた。
本当はオクタヴィアヌスと誼を通じたかっただろうけど、
何しろオクタヴィアヌスは相手にしてくれなかったからね。ヤツは頭がいいから。

でもこの映画を見ると、
――ダメ男でも、好きになっちゃったのかもしれないなあ。

実はダメ男ってわけでもない。将軍としてはリッパな男だ。戦えば強いんだから。
だが、人間、器以上のことをやろうとすると悲惨なことになります。
そしてアントニウスは本人が望むという以上に、状況がそう動いてしまった。
偉大なカエサルの後継を争う立場に。

ナンバー2として輝く人は、ナンバー1には基本的に向かないでしょうね。
資質が違う。そしてナンバー2と1の組み合わせには相性があるので、
カエサルの下では2として安住出来ても、オクタヴィアヌスの下で補佐に回ることはできない。
クレオパトラが本当に賢かったなら、そしてアントニウスももう少し賢かったら、
もしかして彼女がナンバー1、アントニウスがナンバー2で機能したかもしれないと思うけど。
ナンバー1になれない2人が、ローマ共和国とエジプト王国を背負って出会ってしまったのが不運だった。

と、まあ史実はどうなのかはわからないんですけど。
でもクレオパトラも姉だから、「このヒトは私がいなきゃダメ」とか思いたかったのかもしれないし。
カエサルは会った時点で相当年齢差あるし、強かだから、「カワイイオトコ」とは
思えなかったかもねー。愛の対象ではあったかもしれないが、尊敬の部分がより多い。
そこへ行くとアントニウスは「カワイイオトコ」で有り得たからね。

アントニウスのダメぶりが、これがまたアワレ。
居場所を失った男の惨めさがひしひしと伝わりました。
人間、“場所を得る”というのは大事ですねぇ。

最終盤はもう少しテンポアップしても良かったかな。
アントニウスは軍隊に裏切られたんですかね?みんな逃げ出した?
そしたら、それで目を覚まさないアントニウスは相当ニブイ。
でもあれは、睡眠薬を飲まされたっていう演出なのかな。この辺ちょっとわかりにくい。
睡眠薬って飲んで味を感じるものと違う気がするし。

それにしても、たった一人で向かっていって、そこで自刎かなんかするならまだしも、
まだ逃げ戻って来るってのはほんとにダメでしたねえ。
そこが愛の執着なのだろうが……。

クレオパトラを、オードリー・ヘップバーンがやる可能性があったかもしれないってんだから
びっくりだが、むしろエリザベス・テーラーがやったからこそああいうイメージで定着したのかもね。
それでも、予想よりはずっと「可愛い女」で女王っぽくなかった。
もしかして、宮尾登美子はこの映画のノベライズをしたのか?
まあでも映画は、金もかけて手間もかけて、たっぷりしたスペクタクルを見せてくれたのでエラい。

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