やっぱり上手いなあ。米澤穂信。
飛び抜けて、とまでは言えないが。しかし彼にしか書けないような、微妙なディテイルを
いつも作品に感じる。簡単にいっちゃえば、パズル的要素なんだろうけどね。
今回のこれも、基本設定はとてもありがち。
挫折を味わったニートが、ニート生活から足を洗うために
「探偵でもやってみるか」程度で始めた探偵事務所の話ですから。
(しかしいきなり探偵事務所はハードルが高くないか……。
自営業って、なまなかの神経では出来ない気がする。)
少し目先を変えたところは、探偵事務所長とおしかけ雇われ人がいて、
それぞれが扱っている事件が全然別、というところ。
当然、全然別なのが最後まで別だと多分ハナシにはならないが、最終的にはリンクする。
そのリンクのさせ具合が……絶妙、というとオオゲサだが。巧妙。相当に巧妙。
“事件”も、片方は絵に描いたような“事件”ですが、もう片方は単に調べ物程度のことなんですよね。
ちょっと気の利いた司書さんなら、一日二日で解決してしまうような。
でもこういうのを、事件として設定したことにも技を感じるし、
またそのさりげなさが米澤穂信。という気がする。
そして、実はとてもコワイ話でした。
ホラーではない。人によってはコワくはないのかもしれない。
しかし事件の全容が明らかになるに従ってわたしはだんだんコワくなったし、
最後にもっとコワくなり、最後の最後でさらにうわぁぁぁ……みたいな。
微妙に、くすぐられるようなコワさ。いい意味で、苦笑いをしてしまう。
これはシリーズ物らしいので、次の作品も楽しみにしておく。
が、けっこうこのシリーズ物はやりにくそうだなあ。話が作りにくそう。何となく。
だがはっきり文句を言っておきたいところもあって、それは、
「全くキャラが違うはずの所長と雇われ人、一人称の部分は相当に似通っている」ということ。
元ニートながらも基本鋭い所長と、見た感じだらっとしたプー太郎の雇われ人。
それぞれの視点の一人称で話が進むのだが、ランダムに一部分だけ読むと、
多分どっちが喋っているかわからない。
いくら雇われ人が外見ほど中身がぼやっとしているわけではない、とフォローが入ったとしてもさ。
ここは、もう少しがんばって欲しいかな。
そして仕掛けの多い米澤穂信がGENさんについて何も仕込んでいないとは考えにくいので、
その部分も今後のお楽しみとしておこう。
米澤穂信は、古典部シリーズが今、図書館で予約待ち。
そもそも「氷菓」が全市図書館合計4冊というのはいかにも少ない。
もう少し冊数を上げてもいいんじゃないかね?この人は10冊くらいあってもいいと思うよ。
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