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◇ 柴田元幸「柴田元幸と9人の作家たち ナイン・インタビューズ」

これはとてもいい本だ!

出版はアルク。ここはそもそも英語教材の会社で、なにやらかにやら手広くやっているらしい。
ネット上で無料で利用できるコンテンツもそこそこあった気がするので、わりあい印象の良い会社だ。
ここで出している「ENGLISH JOURNAL」での、アメリカ文学作家
(カズオ・イシグロと村上春樹を除く)へのインタビューを1冊にまとめた本。

そもそもわたしは柴田元幸をたぐってこの本を読んでいるので、
こと改めて言うまでもないが、インタビュアーが柴田元幸なのはアドバンテージ。
翻訳者として、この人、けっこう人気でしょ。
そして彼がインタビューしたものを彼が翻訳して、そのインタビュー自体がCDになり、
付録として本についているんだから、至れり尽くせりな感じですよ。
こういう仕掛けがある本だとは本を開くまで知らなかったので、「おお!」と思った。

見開きの左は英文。右は和文。
活字も大きく、行組みもぱらっとして見やすい。
これは英語学習者には「お勉強!」という感じにもならずに普通の本として読める。
ついでにいえば、柴田元幸もこういうお仕事をしてお金になるなら、シアワセでしょう。
どちら様にもハッピーな、喜ばしい本。

……とはいえ、個人的な(しかし根本的な)モンダイが。

この本の内容はわたしの英語にはちょっとムズカシすぎます……
「ENGLISH JOURNAL」、存在すら知らなかったが、
まあある程度以上の上級者向けなんでしょうね。
そもそも純文学作家(多分この本のラインナップだと、日本で言うところの純文学)が
自作について語る話が、わかりやすい具象的な話になるわけがない。
これは、日本語で語られても読みにくかろう。それが英語なんて、ますますわからん。

うーん、本の作り自体はかなりそそられるんだから……
わたしの場合は、そうだな、どんな本だったら楽しく読めるかな?
もっと内容自体がシンプルで具象的、そして主に会話で構成されているとより一層ラクですね。
一文一文が短い方が読みやすいし。
その上で、興味を持てるテーマ……。うーん。

思いついたのは、「イギリスの職人たち」とかいうテーマでインタビューかな。
けっこう含蓄のある話が聴けそうな気がする。しかしそういうテーマだと、
英語でインタビューが出来、しかもそれをちゃんとした日本語に翻訳出来、
職人という(おそらく)口が重い種族に語らせる技術を持った人を探すのが大変だよなあ……

他には……ああ、イギリスの美術館を訪ねて、その展示品について学芸員に語ってもらう、
なんてのはもっといいんじゃない?
学芸員の人なら、ある程度説明には慣れているだろうし、インタビュアーは、
そこから、少々人間らしい感想などをちょっと引き出せばいいことだ。
会話文と説明文のバランスがいいものになりそうな気がする。
ブロンテ姉妹を訪ねて。
イギリスの研究者とか、ハワースの地元の人とかの話を多めに含んだ紀行文でもいいかな。

……結局ありがちなテーマしか思いつかんな。
つまり、BBCがテレビ番組にしているようなラインナップ、アレをぱくって
本の形で再構成すればそんなに外れないわけやね。

ナイン・インタビューズ 柴田元幸と9人の作家たち
ポール・オースター 村上春樹 カズオ・イシグロ リチャード・パワーズ レベッカ・ブラウン スチュアート・ダイベック シリ・ハストヴェット アート・スピーゲルマン T・R・ピアソン
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しかしこの副題は、わたしのキライな村上春樹の「ナイン・ストーリーズ」から
来ているのであろうと思うと、少しテンションが下がる。

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