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◇ クレイグ・ライス「スイート・ホーム殺人事件」

いや、基本的にはわたしの好きな系統の話だと思うよ。こういうコージー系は。
……だが、訳が乗り越えられない。一体いつの訳だよ。

もちろんずっと前の訳が古びるのは仕方ないことだ。
ただねー。この訳、軽みを目指したせいか、当時の言い回しが多すぎるんだよ。
主人公は10歳から14歳の三人姉弟。それが、

セセラ笑ったり、
「母さんはボンヤリではないのよ」と言ったり、
“下検分”したり、
「あんたは含みということのわからない人ね」と言ったり、
「とてもシャンだわねえ!」と言ったり、
「まア!」と言ったり、
おじゃが(じゃがいも)、おさつ(さつまいも)、こさえる(拵える)、という言い回し――
「母さん、少し隈取りをお入れなさいな」(アイシャドーのことか?)
「母さん、ピンクのバラを一輪、たてがみにさしてあげましょう」(……ライオン?)

……きつくないか。読んでてつらいです。

当時……っていつなんだ?文庫の出版は奥付によれば1976年だが、
訳自体はもっと前だろう。マンガのサザエさんをイメージした。とすると戦後すぐくらい?
やっぱり当時流通の口語を訳に取り入れるとあっという間に古びる。
たとえば、「イケメン」という単語は、おそらく10年後、
時代色がついてどうしようもなくなってるだろう。
この文庫はカバーが杉田比呂美で、特に昔っぽくもないので余計文章とのギャップが……

なので、もし今後この作品を読むのなら、2009年の新訳版が無難かと思います。
羽田詩津子訳。この人は知らないけど、既知のツラさより未知の可能性に賭ける。

内容は……若干まどろっこしいけど、いいんじゃないでしょうか。コージーで。
それなりの旨味はあると思います。まあ微妙に甘いかなー。
もう少しピリっとしたところがあってもいい。
それに、最後はなんかドタバタして終わっちゃったよね。これは訳でもう少し何とか
出来る部分だと思うが。

自分で読んだのは旧版だけど、もしかして今後読む人のために新訳版を貼っておく。

スイート・ホーム殺人事件〔新訳版〕 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
クレイグ・ライス
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アマゾンでこの人のラインナップを見ると、わりと食指が動くなー。
もう数冊は読んでみようか。

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