勇気をもって2巻に進んでみました。
おや?おやおや?
前回はアクションを飾りにつけたラブコメだった。
今回は、むしろラブコメを飾りにつけた、えーと、謀略小説?
微妙に芸風がシフトしてるぞ。
……そのおかげで、「1巻の甘甘ぶりを6冊ひっぱったらどうしよう……」という
心配も(完全にではないけれども)杞憂、面白く読めた。めでたい。
「内乱」はわりあいエピソードごとにまとまっている話。
その分、少し小粒感はあるかな。でもこの巻は伏線を張りつつ、話をうまく展開してるよね。
新キャラも何人か。この巻にしか出てこないであろう人もいるけど。
ちょっと待て!手塚って手塚って……手塚といえば「ここはグリーン・ウッド」だ。
しかもキャラが相当に被るぞ!ちょっと違うけど、朝比奈さんは光流だし。
これは……さすがにここまでになるとわざとかな?
狙っているか、有川浩?
第一章。
お父さん、いい味出してるなあ。……いいのか、お父さん。堂上さんに試練を体験させなくて。
いや、それとこれとは話が違うし、そもそもそこまで話はいってないけれども。
レファレンスについての部分は面白かった。「書誌学の応用」と言われてもピンとは来ないが、
多分みんな無意識のうちにやっていること。
そういう部分でも、改めて言葉で読むとなるほどと思う。
柴崎が柄にもなくウェットになるところ、読んで泣けた。
冷静に見れば、彼女のキャラとは違うだろー。最終盤の後ならわかるけど、
ちょっとタイミング的に早いやろー。……でも許す。
第二章。
小牧さんがああいう状況で連れて行かれるのは、フィクションとしてもちょっと無理くり。
あそこまで強引にストーリーを持って行かれるとわたしはツライな。でも目をつぶろう。
しかし目をつぶれるのはこの辺りくらいまでかもしれない。ぎりぎり。
堂上さんと笠原の会話が、あまりにもわかりやすくなっていくのはちょっと不可。
少なくとも堂上さんは、せめて人前ではもう少し上手く誤魔化してくれ。その方が好み。
それに、主役たちと比べて、小牧さんはスムーズすぎるぞ!この贔屓はどうしたことだ!
まあ、主役たち並みに引っ張られてもそれはそれで困るが……
第三章。
柴崎も興味深いキャラだが、うーん、この章はねえ。
あんまり女女したシチュエーションを、紋切型に並べられてもつまんないかなー。
柴崎も、頭がいいならそういう人間関係からもっと独創的な方法で逃げて欲しかったりもするし。
でも結局この作品の主たる魅力は“王道まっしぐら”だと思われるので、
(良く言えばね。悪く言えば“過去作品のいいとこ取り”か)しょーがないんだろーなー。
百科事典の使い方は知らなかった。牽引なんて使ったことがない。
でも記事の後の方に、関連語が書かれている百科事典も多いと思う。小さめの奴限定なのか。
図書館を巡る状況がストーリーの根幹で、その部分を読むのが面倒だと言ったら作者に気の毒だが、
「戦争」でも思ったことだけど、細々と書いているのでざく読みしたくなる。
やっぱり説明に堕してしまっているということだよね。
説明部分を読ませるのは、宮部みゆきが大変上手い。プロやなあ、と感心する。
第四章。
自分がこういうブログを書いていて、話がこれだと肩身が狭いが、公共サービスとは
スタンスが違うから。実際のところは、公共サービスでそういう方向の実験的な試みは
有り得ないよね。ここも話が無理なところ。
手塚兄側はすごくわかりやすい敵役で、――もうちょっとわかりにくくても
(あるいは敵は敵なりの事情があるということを肉付けしてくれても)いい気がするなあ。
あんまり敵側の事情に筆を費やすと、話が複雑になるから書かないんだとは思うけどね。
第五章。
前章からの連続性が強い話。えー、また若干ざく読みになるわけですが。だって展開読めるし。
録音機をめぐる会話のあたりは作者は完全に楽しんで書いてる。
わたしも玄田隊長がいる時の皆さんの雰囲気は大変好きなので楽しいが。
しかし笠原がこの流れで白眼視されるのはどうもなあ。「ハリー・ポッター」でも
どうしても乗り越えられなかった壁なんだけど、陥れられた時にどうしてその他大勢が
こぞって敵に回るわけ?そりゃあ柴崎に比べたら親友じゃないかもしれないけど、
同じ寮生ならば親しい友達って言ってもいいはずなのに。
何かがあった時遠巻きにするのは“口は利くけど面と向かって事実を聞けるほど親しくない人”
という範囲の人でしょう。寮生だったら、全員が全員ではないにせよ、もっと親しいはずだ。
「ちょっと笠原、濡れ衣よね!?」と。どうして他の誰も訊いてくれない。
笠原だって、「違うから!」って直接言える人の何人かはいなきゃおかしいはずなのに。
主人公、どんだけ人望がないんだって話ですよ。ここが納得出来ない。
――そして、章のタイトルで笑ってしまう。
以上、一つ一つ拾って書いてしまったが。
こんだけだらだらと書いて、誰のためにもならない冗漫さではあるのだが。
……久々にハマった本ということで、カンベンして下さい。
今は亡き児玉清も文庫版で、作者と嬉々として対談している。
彼も相当に読んだ人らしいから。あの年代で、しかも読書歴豊富な人にも十分通じる魅力があると。
少し嬉しい。
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先日、シリーズ6冊。……大人買いしました。
コメント
Unknown
狙ってるに1票。
寮モノで手塚、光流は確信犯でしょ^^
意外と話題になってない気もしますが。
気づく人だけ気づけばいいと、有川さんがコメントしてないのかな?
Unknown
「ここはグリーン・ウッド」は面白かったですねえ。
……かなり前のものですが(^_^;)。でも時々読み返します。
オマージュはこっそりとやりたくなるものなのかもしれませんね。
言わば「好きだよ」というこっそりとしたササヤキですから。
考えてみると、そこを大声で指摘してしまうわたしが少し無粋なのかもしれません。
外野はこっそりニヤッと笑って「……ふーん、好きなんだ」くらいが適度なのかも。
ご訪問ありがとうございました。