またまた宮田のエッセイ。何と今回は珍しく、テーマがあるんだぞ!
テーマは、タイトルにもあるように“ホンノンボ”です。
なんじゃい、ホンノンボって?……この問いに対する正確な回答は、うーむ、今のところナイ。
なぜならば、この本は「ホンノンボとは何か」を探求する本であり、
目下のところ、日本で唯一のホンノンボについての専門書(?)と思われるから。
(というのは実は嘘で、本文にも出て来るロルフ・スタンによる「盆栽の宇宙誌」というのが
日本語で読める一番詳しい本らしい)
その未確認物体ホンノンボのオーソリティ(?)宮田珠己によれば、その特徴は以下の3つ。
1.本体が岩であること
2.ミニチュアがのっていること
3.水を張った鉢のなかにあること
この3点だと「……これ盆栽?」という感じだが。ベトナムではこういうことになっているらしい。
たしかに日本人が思う盆栽とはちょっと違うよね。
えーと、わたしが説明するとしたら、山水画を3D化して、ユルさを足したような……
メインが岩で、植物部分はあくまで従。そしてミニチュアがユルさを添えている。
しかし実はホンノンボの要諦はそのユルさである。
だいたい名前からして“ホンノンボ”、説明がなくても既にユルさが存在しているではないか。
いいですねえ、この何の役にもたたなさそうな感じが。
ちなみに言葉をちゃんと説明すると、ホン=島、ノン=山、ボ=シルエット、景色らしいので
島の山の景色ですな。宮田は山水景という意訳を提案している。
うーん、蓬莱山のジオラマ、と説明すれば若干イメージしやすくなるかな?
だがこの本、内容的には正直まだまだ喰い足りない。
何せ取材方法が全くの個人であることに留まっているので――ライターが手際よく効率的に
並べるような、そんな情報量にははるかに及ばない。
一応取材で何度か渡ベトナム(渡越らしいです)し、事前に在ベトナムの日本人や
前回知り合った通訳にも情報収集を依頼したらしいが、取材の際に一番王道っぽい、
現地コーディネーターに相談するなどということは行っていないので、
その情報の密度が非常に薄い。
でもその情報量の薄さを宮田の文章が補うわけだから、それはそれでいいんだけどね。
情報を並べることは凡百のライターが誰でもやればいいことなんです。
宮田には、彼しか書けない脱力力のある文章という武器がある。
そこを存分に生かしてくれてるから、いいんです、それで。
あれ?なんだかずいぶん持ちあげてるな。こんなに持ちあげるほどの人だったかな?
何かくれ。
実は、わたしはミニチュア好きのジオラマ好きです。
(これで鉄なら鉄道模型マニア一直線な感じなのだが、鉄分は若干しかないので、
その道にハマらないで済んでいる。)
なので、ホンノンボ、ツボですねー。これが実際に見たら気付かずに通り過ぎてしまうほど
地味なものなのだろうが、この本により「おお、そんなものもあるのか」と知ることが出来、
大変に愉しい。ありがとう宮田珠己。
模型を眺めるのが好きな人、
山水画に描かれた風景に入ってみたいと思ったことのある人、
堆朱の菓子皿のデザインで空想にふけったことのある人、
東武ワールドスクエアで2時間堪能した人(←長すぎる!と言われたが、あそこは楽しいよね?)、
そういう人はおそらくホンノンボ、好きだと思います。ぜひご一読を。
講談社 (2011-02-15)
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よしわかった。宮田の1冊はこれにしよう。
って、もっと買ってやれ、自分。――でも「わが愛の」という形容詞がつく辻邦生でさえ
著作としては3作品しか持ってないし、池澤夏樹だってツブし(=全作品制覇)つつある
作家だけど、こないだようやく「パレオマニア」買っただけだし。
(“好き”な作家の本を1冊も持っていない状況はやはり問題だろうと、意識して買ったのだ)
ほんとに買わんなー、わたしは本を。
実用書を含めても年間10冊ちょっとだろうか。20冊弱くらいか。
出版業界にほとんど貢献していない本好き。……ちょっと申し訳ない。
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