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◇ ミネット・ウォルターズ「囁く谺」他

“英国ミステリの新女王”などという惹句が与えられているとしたら、
読まずに通り過ぎることはどうしても出来ないじゃないですか。
なので、読んでみた。「氷の家」「女彫刻家」「鉄の枷」「昏い部屋」「囁く谺」と順番に。

――いやまあ、巧いけど。

相当いい意味で巧いけど。で、それなりにキャラクターに旨みがないわけでもないけど。
なんかどうもぴんとこないなあ。ちゃんと読ませるんだけどね。読ませて、頷かせるが、
単にそれだけで、愛着が湧かない。
わたしは、やっぱりもうちょっと可愛げのある方が。
可愛げも、厳密にはないわけじゃないんだけどねー。
「囁く谺」のテリーなんてのは、ローレンス・ブロックのマットスカダーシリーズの
TJを思わせるような可愛げがあるし。
ただ、まあ……長いかなあ。巧いから、冗長感もそれほどないんだけど。

明確な欠点が見当たらないのに何となくノレないのは、まあやっぱり合わないってことなんでしょうね。
あと1冊、読もうかどうしようか迷って、結局これで止めることにした。
巧さだけで読んでもね……。といっても、巧い小説を打ち止めにするのって、
なんか後ろ髪が引かれるというか、敵に後ろを見せるというか、卑怯な気がするというかで、
びみょーな気分になる。先日の恒川光太郎もそうだけど。
しかし巧い小説を巧いからという理由で読み続けて行くと、人生何百年あっても足りません。

この話はちょっとごちゃごちゃしているので、普通の速度で読んでいて、あまり人の名前と
人間関係が頭に残らなかった。残らなかったものを戻って確認しなければならないほど
ごちゃごちゃしているのは書き手の責だと思うので、ちっとストーリーに凝り過ぎだと感じた。

氷の家 (創元推理文庫)
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そしてこの次読もうとしているのが、ジョアン・フルークなんだから、どうなのそれ?って感じ。
ジョアン・フルーク未読だからまだ何とも言えないけど、えーと、イメージとしては、
高村薫を袖にして、芦原すなおを読み始めるような……。って、これ例えになり得るのかいな。
別に芦原すなおを読んでたっていいんですけどね。

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