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◆ 並河靖之。

ううううう。なんだこれは。有り得ない。有り得ない。有り得ない。

NHKのBS2とハイビジョンがくっついてBSプレミアムになってから、
美術系の番組の充実度が素晴らしい。――ま、今だけだとは思うけど。NHK使いまわし多いし。
しかしとにかく今は、綺羅星のごとくというか、満を持してという感じ。

若冲の特集番組もすごくて、もしかしてこれにもいずれ触れるかもしれないが、
今回言いたいのは「極上美の饗宴」。
……そして相変わらずNHKの番組ホームページの作りは「なんやのん、これ!」と言いたいほど
テキトーなので、以前の情報が全く得られない。何とかしろNHK。
過去の放送番組の内容を掲示しておくなんて、基本中の基本じゃないか。
そこでどーして手を抜く。または情報の出し惜しみをする。受信料を有効に使わんかい!

まあ、それはともかく、「極上美の饗宴」がいい。見応えがある。

フェルメール「真珠の耳飾りの少女」に篠山紀信が。
サージェント「マダムX」に篠井英介が。
ボッティチェリ「ヴィーナスの誕生」に井上文太が。
(画家。三谷幸喜の三銃士の人形キャラクターデザインをした)

がっぷり四つに取り組んだ。かなり力を入れた、密なコラボになっていた。面白かったよ。
そしてこの趣向の後には、素直な作品紹介として、

七宝の並河靖之
彫金の正阿弥勝義
(そして多分)陶芸の宮川香山

が来る。正阿弥と宮川は(これを書いている時点で)未視聴。

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で、まあ並河靖之の回を見たわけですが。
――この並河靖之が凄かった。ほんとに凄かった。

並河靖之の傑作「花鳥図花瓶」。清水三年坂美術館所蔵――って、美の饗宴のHPを丹念に
見て行くと一応写真はあることはあるんだけど、………………こんな小さな写真で
何の役に立つというのだっっ!!ふざけるのもいい加減にしろ、NHK!!

――番組の中で、画面を通して見てさえ、それはそれは美しいんだから。
漆黒の花瓶に浮かぶもみじの若葉。緑色が重層的で、何度目をこすってみても立体にしか見えない。
花瓶の表面に。絵付けされた七宝が。それが奥行きをもって見えるっていうのは、
一体どういう魔法なの。

有り得ない、とテレビに向かって叫んでいた。(叫ぶな)
細かいも細かい。再現に挑んだ現代の職人が「あまりにも細かいので」1,5倍の大きさで
再現することになったくらい。
色数も凄い。もみじの若葉の緑だけで……あれ?25色使ったって言ってたっけ?
ちょっとうろ覚えだが、もしほんとに25色だったら……
絵じゃないんですよ。七宝ですよ。焼かないと実際の色がどう出るか、実はわからないんですよ。

そこに辿りつくまで、一体どれだけの精進を……繰り返して繰り返して繰り返して。
考えただけで貧血を起こしそうになる。
しかも並河はそれだけで満足せず、色の重ね塗りまでしている。
もみじの若葉の端に、わずかに黄色みの強い色を置く。ほんの半滴。
それだけで別な色になる。影になった葉、日光を浴びている葉。緑の濃淡。
ほんのちょっと色が狂えば、それは奥行きの混乱になってしまうのに、
並河はそれを完璧にまとめ上げる。……有り得ないでしょう。

有り得ない。有り得ない。この言葉を何度繰り返しても足りない。

こういう超絶技巧は、でも言われなきゃわからないからな、わたしのレベルでは。
なのでやっぱりこういう番組は有難い。こういう良質な番組を、NHKには今後も期待したい。
――質の良いサイトとともに。

「花鳥図花瓶」だけで十分傑作なんだけど、他の作品ももっとじっくり見たかった気はする。
白藤と紫藤で素敵な花瓶もあったなー。
デザインとしてはあんまり感心しないけれど、龍の何だかもあったし、中国風のデザインも
あった気はするし。

彼の作品は絶対見に行くぞ!と心に決めた。
京都に並河靖之七宝記念館清水三年坂美術館がある。
一応、予定では今年京都に行くので……絶対忘れないようにしなくちゃ。
けっこう営業時間短めのようですから、注意が必要。

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皆さんのおかげでこの本を買いました。
ありがとうございました。

ただし残念ながら「花鳥図花瓶」の写真はなし。
そして、それぞれの作品の写真が1ページに1作品だったらもっと良かった。
少し写真が小さいのが惜しい。

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