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◇ 読書傾向について。

本好きが2人集まれば“どんな本を読んでいるのか”という話に当然なるわけですが、
……実はこれを話すのは、ものすごく難しくありませんか。
世の本好きの皆さんは一体どういう説明をしています?

読書遍歴は言える。これはわりあい簡単。今までの事実を述べればいいだけのことだから。
問題は「読書傾向」。これを細かく言うと、当然“今後読む本”という含みも入ってくるわけで。

つらつら考えてみるに、自分の場合、今まで読んで来た本とこれから読む本が
かなりの線で乖離している。何しろ蔵書でさえ「読書遍歴」は表しても、
「読書傾向」はほぼ反映されていないんだから、困ったもんである。
というのは、わたしは基本的に再読をしない人間で、社会人になってからはずっと図書館利用。
よほどのことがないと買わない。

さらに好きな作家はある程度漁り切る。
つまり今まで読んで来た作家の作品で今後読む本といえば、漁った時点では出ていなかった新刊か、
その時点であまり興味を惹かれなかった作品。
ということは、今まで読んで来た作家の本を今後がんがん読むかというと、その可能性は低い。

今まで読んで来た作家だって、何十年のうちには好きだったのが嫌いに……まではならないにしても、
そんなに好きじゃなくなっている場合だってあるでしょ?
高校時代はヘルマン・ヘッセが好きだったけど、今はほぼ読む気にならんし。
塩野七生は大学時代から10年位はずっと好きで追っかけていたけど、
「ローマ人の物語」を文庫で出してから、その文庫の薄さが赦せずにあまり手が出なくなって
しまったし。(どんだけ心が狭いのか……)
永井路子ももう読まんしなー。田中芳樹ももう読まんし。

そして、作家だけで読んでいるわけではないんだ。
好みが文系知識本なので……と言おうとして今年になってからの読了本をチェックしたが、
なんだか小説ばっかり読んでるなあ。こんなに小説ばっかり読んでたっけ?
文系知識本と言えるのは、「平安時代の都市生活と郊外」と「ロンドンの近現代建築」くらいだ。
その他3割くらいはエッセイで、残りは小説。ま、課題図書にはどうしても小説が多いからね。
仕方ないんだけど。

でも文系知識本ていうものの説明は、一体どうすればいいんです?
図書館の十進法分類で言ってもいいなら何とかなりそうだが。
020、160、170、180、190、200、210、230、280、
290、380、520、700、710、720、740、750、770、
900、910、920、930……
「こういうのの知識本を読んでいます」……有り得ないでしょ、口頭での説明としては。

小説も読みたくて読んでいるというよりは、読もうと決めているから読んでいる。
そういう感じ。それを読書傾向と言っていいものやら……。
だって読んで面白いと思う小説なんて、そうそうないんですよ。
まあ印象として可不可でいったら可かな、というところまで妥協しても、
今年の読了本約40冊のうち16、7冊……。まあまあというレベルだと7冊、
素直に面白いと表現出来るのは森絵都「DIVE!」だた1冊。
でも「DIVE!」は面白く読んだが、「DIVE!のような小説が好きだ」と言うのとは
また違うんだよなー、本人的には。

これが「博士の愛した数式」だったら、のような小説が好きだ、とは言える。
「西の魔女が死んだ」は大好きだが、のような話が好きだ、とは言えない。
やっぱりこの2つの間には相当上手さに段階があると思うので。

好きな作家と言えば一応北村薫を挙げるけど、彼の場合好きと言えるのは少なくとも現段階では
「円紫さんと私」シリーズと「冬のオペラ」。これは相当に好きなのは間違いない。
しかし他は、まあ悪くはないけど、というレベル。
でもわたしの好きな作家の中では北村薫は一番メジャーだと思うし……。
シャーロット・マクラウドは「セーラ・ケリングシリーズ」も「シャンディ教授シリーズ」も好き。
しかし別名義のアリサ・クレイグのマドックシリーズは
ぴんとこなくて2冊で終わってしまった。
有栖川有栖は全体的にはまあまあ好印象だが、作品としては「学生アリス」シリーズしか
積極的に評価はしてないし。

作家としては辻邦生が好き。これは大好き。
しかし正直作品としては「背教者ユリアヌス」と「春の戴冠」くらいで、他は普通程度。
(いや、まだ全著作の半分くらいは未読ですが)
エッセイなんかだと、ああ、この人好きだ!と思える一文があったりするんだけど。

池澤夏樹は、作家としてのスタンスは好きなのだが、あのインテリ臭のせいで、
どうも素直に好きと認めるのが癪に触る。いや、そこも含めて実は好きなのだが。
しかし彼には突出して好きだといえる作品もないので、好きな割には本を1冊も(!)
持っておらず、好きな作家と言う資格があるのか心許ない。

白洲正子。これは書き手も作品も好き。しかしまず白洲正子を第一に挙げるのは照れがないでもない。
そういう立場の人じゃない気もするし。

だいたい辻邦生にしたって池澤にしたって、白洲正子にしたって、
普通の人に「ああ、なるほどね」と言ってもらえる確率はかなり低いんですよ。
彼らは決してマイナーではないはずなのに。メジャーとは言えないまでも。
相手がわからない作家をいくら挙げても読書傾向の説明にはならん。
わたしにはメジャー指向は全くない代わりに、同じくらいマイナー指向もない。
だが、言われ方としては「マニアック」となってしまう……。

恩田陸。池上永一。佐藤亜紀。宇月原晴明。梨木香歩。(この辺モロ、ファンタジー大賞系)
カズオ・イシグロ。赤瀬川原平。藤森照信。平出隆。
山尾悠子。森雅裕。

棲息作家でちらちら横目で様子を伺っているのは以上の人々。
ま、恩田陸は読み始めなので、今後どう転ぶかは不明。
まあ赤瀬川さんも家買ってからは内容薄いしなあ……。
カズオ・イシグロは好きとは言えないが気になる。
そして山尾悠子は好きだが超絶遅筆だし……。
森雅裕は……ああ、わたしはこの人をこそ書かせてあげたいよ。この人の作品を読みたいよ。
本の神様。奇跡を起こして、どうかこの人の本が普通に出版されるようにしてあげて下さい。

まあその他にも細かい所では色々ありますよ。
若桑みどりや井波律子、陣内秀信、青柳正規あたりの学者系。
「蔵」1作だけはものすごく好きな宮尾登美子とか。
文章的にサッパリ評価出来ないけど、なんだか妙に好きな堀田善衛とか。
「ダイヤモンド警部シリーズ」の続刊が出ないかな、と待っているピーター・ラヴゼイ。
「マットスカダーシリーズ」のローレンス・ブロックも待っている。

しかしこういうことを、一体どうやって簡潔に説明出来るのでしょう。
無理だと思いませんか。
なので「うーん、まあほのぼのミステリ系かな……。北村薫とか……」とか言って、
あとはもごもごとお茶を濁す。

本の海は思った以上に広大ですね。そして舟は一人乗り。
……ちなみに課題図書リストは1500冊を現行超えている。アホですな。
でも今後は少し読む冊数を減らそうと思う。追いまくられるように読むというのも、
有限の人生において馬鹿みたいな話だとは自覚があるので。

……自覚があっても出来ないことは、山のようにありますけどね。

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