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◇ 北村 薫「ニッポン硬貨の謎 エラリー・クイーン最後の事件」

実に久々な北村薫。

――だが、それほど面白くはなかったのであった。
いや、普通なんですけどね。でも北村薫が普通に面白いだけでは残念なのであって。
繊細さが身上の人だろうと思うのに、これはそういう部分、ほとんどないですからね。

とはいえ、作者本人が存分に遊んでいるとは言える。ここまで遊べれば本人楽しかろう。
作りもけっこう凝っている。作者である北村薫は作品内では、訳者として規定されており、
この作品自体が“貴重なクイーンの未発表原稿!”という扱い。
パスティーシュ(!)らしく――いや、でも、クイーンはもっと読むのに時間がかかる
文体だったはずだが――これはファンなら大喜びだろうなあ。
……だがわたしはクリスティ派なので……。
クイーンの作品もはるか昔にけっこう読んでいるはずだが、内容はきれいさっぱりなくなっている。

脚注(というのではないね。後注というか段落末注。)でもかなり遊んでいて、
内容自体にすらその注についての言及があるほどだけれども、わたしは実はあんまり後注が
好きではないので、これがめんどくさかった。
話の流れが阻害されるじゃないですか。ページ戻ったり何だり。

それに加えて、やはりクイーン作品を下敷きにしているので、その内容がすっぱり抜けてると、
これはダメだろうなあ……。大のクイーン好きが楽しめるという作品。

ニッポン硬貨の謎
ニッポン硬貨の謎

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北村 薫
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若竹七海他の競作アンソロジーに「競作五十円玉二十枚の謎」というのがある。
(けっこう有名だが未読。いずれ読む。)

競作五十円玉二十枚の謎 (創元推理文庫)
若竹 七海 依井 貴裕 有栖川 有栖 笠原 卓 法月 綸太郎
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本作もテーマとしては五十円玉二十枚の謎。
競作の方に北村薫は参加していないけど、結局こういう長編になったわけ。
……ちっと無理があると思うけどね、ストーリーとしては。

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