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< ゴールデン・スランバー >(テレビ視聴)

最近、共時性づいている。

森絵都「風に舞いあがるビニールシート」を図書館で予約した途端、NHKでドラマを放映するし。

半月ほど前、マルタの猫関連で本ブログのお客さんが普段よりだいぶ増えた際、
検索ワードで「マルタの優しい刺繍 映画」というのも散見され、
どんな映画だろうと気になっていたら放映されるし。

数日前“小さくまとまんなよ!”という言い回しを使ったら、
録画していたのを見た「ゴールデン・スランバー」に
ゲームソフト「シーマン」が映り、「小さくまとまんなよ」とボソリ。うへー。

そして「ゴールデン・スランバー」を見終わった次に、やはり録画していた
「どれみふぁワンダーランド」を見たところ、冒頭の楽曲が「ゴールデン・スランバー」。
この辺でむせたわ。

 

――誰かわたしの生活を監視してますかね?
(ま、上記のうち2つは関連性が想像出来ないこともないけど。)

※※※※※※※※※※※※

さて本題。

……いやー、これは見るのツラかったねー。細切れや早送りで何とか最後まで辿りついた。
何しろわたしは「主人公がハラハラドキドキするor恥ずかしい行動をとる」映画がキライなんだ!
この映画はハラハラしっぱなしじゃないですか!
もう最初っからダメな感じでした。冒頭、エレベーターの中のシーンからすでに
「ああっ、この子が通り魔に襲われたらどうしよう……」とハラハラ。
……向かない。この映画はわたしには。

だいだい、わたしは伊坂幸太郎の小説はキライだ。
ではどうして見たのかというと、一応原作は本屋大賞だし(作品そのものは読む気にならないが、
映画で何とかお茶を濁す……)、何より地元オールロケってことで。
知り合いもボランティアとして参加してたし。
とりあえず見とこうかい、という微妙なニュアンス。

そーしたら、開始5分で再生停止ボタンを押すハメになった。

(ネタバレあります。)

堺雅人が吉岡秀隆の車に乗り込んで、ミネラル・ウォーターを飲まされるでしょう?
そして目覚めた堺雅人の第一声が、「あーっ!お前、これに何か入れただろ!?」
……ブチッ。……あり得ない。

何年振りかで会った友達に睡眠薬を飲まされるというのは、ストーリー上は当然あることだけど、
目覚めてすぐ「何か入れただろ!?」はあり得ないでしょっ!!
その反応はオカシイ!どんだけ緊張感のある間柄だったんだ!喰うか喰われるかじゃないか。
しかも吉岡秀隆の返事が「入れたよー……」。
おい、いい加減にしろよ。

ストーリーに対する苛立ちは、半分近くになるまで続きました。
話がサスペンスじゃなくて不条理劇なんだと気づくまでは。
――そこからは、話の無理さ加減には目をつぶったので、何とかなりましたけどね。

純粋に映画の作りとしては、出来は良かったのではないかと思う。
空気感の出し方や、構図への気の使い方、役者の演じ方、キャスティング、みななかなか。
けっこう俳優陣が豪華でしたね。しかもわりあい品のいい豪華さ。
上手い役者をちらっちらっと、しかも適材適所で使っている。
派手な美男美女俳優をデコレーションとして散りばめるということはそんなに難しくなくても、
役柄に合ったいい味の役者を引っ張って来るというのは、人脈やタイミング、
おそらくは出演料も絡んだ、けっこう複雑な駆け引きでしょう。えらい。

なのでわたしとしての不満は、その話部分についてです。

不条理とノスタルジーをくっつけないでくれないか……伊坂幸太郎よ。

手術台の上で出会ったミシンと洋傘のように美しい。
――手術台の上で出会ったミシンと洋傘は本当に美しいのか?
日常の平凡な風景の中で繰り広げられる不条理とノスタルジーは美しいものとなり得るのか?

精神的遠近法が狂うから。不条理は不条理らしく書いてくれないと三半規管が酔うんだよ。

この人はノスタルジックな不条理を書きたかったのかな。
それとも不条理なノスタルジーを書きたかったのかな。
これをそれぞれ別々の作品にしてくれるという選択はないものだろうか。
ノスタルジーといってもあまりにベタな設定だと疲れる気がするけど、
映画の中で描かれた大学時代の友情はとてもきれいだったんだから。
そういう部分は面白く見られたんだけどねー。やっぱり話の不条理さが……乗り越えられない。

が、色々考えているうちに思うのですが、
奇妙な雰囲気の中のノスタルジックな情景を描くのが得意な恩田陸と、伊坂幸太郎は
スタンス的には実はそれほど遠いところにはいない?
ま、わたしは恩田陸を民俗学の文脈だろうと思い込んでいるので、通って来た道は
だいぶ違うようには見えるのだが(伊坂は村上春樹チルドレンなんでしょ?)、
現在位置はせいぜい川一本隔てた対岸くらいなのかもしれない。

うーん……。

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映画は単館系好き向き。

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