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◆ インカ帝国のルーツ 黄金の都シカン

「いまいちだよー」と前評判を聞きつつ行ってみた。珍しく前売券を買ってしまっていたもので。
うん。いまいちでしたな。

博物館とか美術館に、わざわざ出かけていく理由はね。
物が見たいからなんだよね。だから物をちゃんと見せて欲しいの。
逆に言えば、見せる物がないんなら、特別展なんて開くべきじゃないの。

説明が読みたいなら関連本を読むよ。わざわざ出かけて行って読む必要はない。
映像を見たいならテレビを見るよ。NHKハイビジョンでも「世界ふしぎ発見」でも、
シカンについては何回か放映してるじゃないですか。
エキシビであれば、説明も映像も、物を見る人のためのものでなければ。

今回のエキシビは、大した物が来ていないのをカバーするために、
映像や説明で水増ししているので印象が悪かった。
大物はほとんどなく。派手なものだけが見るに値する物ではないんだろうけど、
一個の物として、素人の鑑賞に堪える力のあるものは数えるほどしかなかった。
壺ばっかり見せられてもさー。

去年チェコで、たしかシカン展を見た。
そっちはそっちで、やはり「なんだかなあ」という感じだったが。
シカンとインカを思いっきり混同しているような宣伝だったし(チェコ語読めないけどね)、
会場がしょぼいレストランの奥の展示スペースという、なんだか謎な場所だったので、
(しょぼい展示会場の手前にしょぼいカフェレストランがついているのかもしれない)
実際に発掘品が来ているのか、それともどっかで作った複製を並べているのか、
サッパリわからなかったんですが。
ただ、物は今回のコレより良かったなあ。むこうは逆に、説明が足りないくらい
展示物ばっかりだった印象があるけど。バランスが大事だよね。

大物は黄金の仮面と黄金の儀式用トゥミ。
黄金の仮面の凶々しさは相変わらずピカイチ。
じっと見入る。この造型を成した人々の気配を探ろうとする。
この吊り上がった目。琥珀の目玉、トルコ石の瞳。真っ赤に丹塗られた顔。
異形の神の姿。
荒ぶる神だったのだろうか。そう思うと、秋田のなまはげの造型にも多少通じるところがあるかも。

他にも、蜘蛛型アクセサリーの足の細さに「ううう」と呻いたり、
織物のデザインがどう見てもバイキンマンで笑ってしまったり、
御輿の背もたれ部分の細かな人物の作り方にリカちゃんハウスを連想するとか、
いろいろあったんだけどね。
でも総じて言えば、小粒っていうか薄い。

数が少なくても、物として小さい物が多くても、ちゃんとした意味を持って
それなりの見せ方をすれば、意外に印象がいい場合もあるのだが。
何年も前に来た、アンデス関係のエキシビは地味で展示品の数は少なかったけど印象が良かった。
織物の比較検討がメインで、目玉はアンデスで見つかった少女のミイラ、という
小さめのエキシビだったけど、織物にあまり興味がない私も楽しめた。
見せ方が良かったんだと思う。

シカンはさー。
ずーっと前、ようやく発掘が端緒につき、その成果を何とか発表出来るようになった頃の
エキシビが印象深い。当時はシカンなんて聞いたことすらなかった。
そこで見た墓室の原寸大の復元模型のインパクトたるや。
たかが模型なのに、その凶々しさに見た瞬間固まってしまった。
それが今回は、その同じ墓がちっこいちっこい模型になっていて。人間が10センチくらいに
なっていたほどだから、その小ささは推して知るべし。

いや、まあ、ね。
これが一応発掘資金になるんだろうから、あんまり腹は立たないけど。
でも純粋に見物人としては、満足は出来なかった。もうちょっとがんばれ。

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