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◇ 秋山瑞人「猫の地球儀 焔(ほむら)の章 幽(かすか)の章」(全2巻)

この本を読もうと思ったのは大森望によるSFベスト30に入っていたからだが、
電撃文庫刊と知ってかなり怯む。
だってラノベじゃないですか。
初期ラノベには玉石混淆で良いのもあったけど、悪い意味で花盛りになってからの
ラノベには偏見がある。電撃文庫は名前からしてすでに地雷っぽいし。

うーん、まあでもこれも縁だから一応読もうか。
ラノベだからな。2冊だけざくざく読んでそれで終わりってことで。
……ここまで貶めるなら別に読まなくてもいいんじゃないかと思いつつ。

図書館で借りる段になって、表紙イラストにかなりたじろぐものの、
いや、そりゃまあ、ラノベだしね。と気持ちを宥める。
2時間くらいで2冊とも読み終わるつもりで読み始める。

――正直、上巻の前半は新登場人物の紹介がけっこう続くので、早いとこ話を進めんかい!と
思わないこともない。設定を小出しに説明されて隔靴掻痒の感があるというか。
小説としては多少ぎくしゃくしている部分も感じる。
でもトータルで言えばかなり面白かった。期待していなかっただけに余計。

ストーリーは――おおどころ的にはありがち、しかし小技が利いている。
登場人物に猫を持って来たのが面白いんだろうね。猫とロボット。
猫がこういう風に進化?する必然性は実はないと思うのだが。
話だけだったら少年少女の話にした方が妥当だ。実際そう読んで全く問題ない。
が、猫にしたことで目新しさも出たしワンクッション置けたのかな。

キャラクター小説ではあるんだけど、とりあえず小説としての骨格があるので
それだけでも(ラノベとしては)及第点。なんとなく書いた感がない。
ファンタジー界には、ただ単に作品世界の設定を並べただけで作者が喜んじゃっている話も
あるじゃないですか。
でもなー、最後はなー。うーん、月並みは月並みだよなー。
それまでが75点くらいだったんだけど、結末部は60点くらい。

と、まあ、あまり大したことは言えないのであったが、とにかく言いたいことは
“意外に面白かった”ということです。
ノリは「ダーティペアの大冒険」辺りと近いと思う。
ということはつまり、ガチのSFを期待してはいけない。

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クリスマスって、冒頭の書き方からすれば、もっと活躍するキャラっぽくなかった?
なんか全然ですよね。後半にやっと出て来たと思ったらキャラがブレているぞ。
むしろ震電の方がよっぽど書きこまれている。
……と書いていて思ったが、キャラの命名は少しツラかった。も少し普通の名前の方が、
ワタシはいいなあ。

コノヒトの作品、もう1シリーズ読もうか読むまいか……。
悩むなあ……。図書館のリストを眺めてみても、タイトル的には全くそそらないんだもの。

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