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◇ プラトン「饗宴」

実はラジオの野球中継を聴きながら読んだので、内容は眺めた程度。
なので、あんまり言っていいこともないのだが、ちょっと驚いたことがあったので。

「饗宴」で有名な部分は一応2つだと思う。(他にもあるんだろうが。)

   戦いでは、愛人と愛者を同じ場所で戦わせるべきだ、なぜなら彼らはお互いに最上の姿を
   見せようとして、命を捨てて懸命に敵に当たるだろうから。

   昔々、人間は球形で男男と女女と男女がいた。それが半分に裂かれて現在の人間になったため、
   人は失われた半身を求める。それが同性愛者と異性愛者がいる所以である。

――正確な言い回しを引用はしないが、概ねこういう内容。「饗宴」からよく引かれる部分。

でも最後まで眺めてびっくり。前者はともかく、後者は「饗宴」の後半部分であっさり否定
されてますやん!しかもその根拠が「自分に有害だと感じれば、手足を切断することもある」
という実に実際的な例で!

人間界の成り立ちと医療行為を単純に並べて云々するのは妥当かどうかと思うが、
あまりにも有名な球形人間の話が、同じ「饗宴」内で既に終わっていたとは。
終わっているは言い過ぎか。一つの意見として球形人間の話が出て、
それに対する一つの意見として、賛成出来ないという表明がなされただけ。
しかし後者を語ったのがソクラテスで、そのソクラテスは彼が敬愛する女性ディオティマの
代弁をしてる体裁なのだから、ほぼソクラテス(というよりプラトンか)の意見と見ていい。

それなのに、プラトン以来2000年、残ったんですねえ、球形人間説が。
プラトンの「饗宴」によれば、という風に引用されれば、少なくともその本の中では
それが認められてるもんだと思うじゃないですか。
わたしはこれ、プラトンが認めた意見だと思っていたよ。
面白いもんだ。人間がいかにわかりやすく、目新しいものに惹かれやすいかの一証左?

饗宴 (岩波文庫)
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しかし古典中の古典を岩波で読むというのは、あまり良くないかもねえ……。
偏見かもしれんが、岩波の訳は古いせいなのか総じて読みにくいもん。
活字も小さいしさ。訳も重要な要素なので、どうせ読むなら読みやすさも考えるべきだろうなあ。

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