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< NINE >

 
どんな話なんだかもあまりチェックしないまま見に行った。
女にだらしない男と、彼を取り巻く女たち。
その女たちに、ニコール・キッドマン、マリオン・コティヤール、ペネロペ・クルスといった
面々が並んでいるのに食指が動いた。こんな女優たちを並べてどう動かすんだ?
おお、しかも!ジュディ・デンチとソフィア・ローレンも出るのではないか!!

そしたらミュージカルだったんですねー。
あらすじを1回か2回は読んだはずだから、ミュージカルというのは
知っていていい情報だが、ころっと頭から抜けていた。
いや、いいですけど。ミュージカル好きですし。

でもなー。世にミュージカル嫌いは多いからなー。そういう人は全く見に行ってはいけない映画。
わたしはとても楽しめたけど、これは一般的にヒットはしないだろうなー……
すでにハコは最小になっていたし……非常に見る人を選ぶだろう。

ストーリーを見る映画じゃないからさー。
その部分で「はあ?」と思う人は多いのではないか。逆に言えば、そこさえ乗り越えられれば、
これはもう相当に楽しい作品。

何しろ、女の肉体が!
ダンスより何より、この映画の真骨頂はオンナのカラダだ!
ここまで見せつけるのは下品だよ。でもその下品さが突き抜けてパワーになっている。
ま、こういうのもありでしょ。

よくやったよ、特にペネロペ・クルス。
役柄としては一番……なんていうのかな、損というわけでもないけど。
労多くして功少なしというか。いや、見方によるんだけどね。
彼女のソロの歌なんかはそのまんまストリップティーズでしょう。
わたしの好みからいうとちとやり過ぎ感がある上に、愛人という立場でもあり、
貞淑な妻であるコティヤールの方に観客の共感が集まるんじゃないかなあ。
ちょっとおバカで、湿度高くて、あまり共感を得られない愛人タイプ。
自殺未遂もするしねー。

こういう役柄は、損と言えば損である気もするんだ、女優という人気商売ではね。
でも彼女はがっつりやるんだねえ。感心する。
まあペネロペ・クルスの暑っ苦しい顔で暑っ苦しい役どころなのが見ているこっちはつらいが……

それとは逆に、大層得な役回りだったのがニコール・キッドマン。
出番が少なかったわりには印象的。最初登場する女も彼女だし。
あまり負担にならないような役柄で、無難にやればそれでOKといった感じ。
やりがいというのは、あまりなかっただろうけどね。

コティヤールだけが芝居をしていた……と言ったら語弊があるが。
視点人物であるダニエル・デイ=ルイスを除けば、多少なりとも内面が描かれる女は彼女だけ。
「パブリック・エネミーズ」の時より若く見えた。いい女優さんかもなあ。

わたしはジュディ・デンチが好きなので、「フォリー・ベルジェール」を舞台で歌っている姿は
かっけー!とテンションが上がった。
彼女の出演作は何作か見ているが、能動的に歩き回る役柄は今回が初めてかも(^_^;)。
今まで見たのは老人役ばっかりだったからなあ。
まあ正直、あのお年で衣裳デザインの責任者というのは無理を感じたけど、
50歳過ぎているダニエルの母代り?という役回りからすれば、仕方ないのか。

そしてソフィア・ローレン。
わたしはあまりイタリア映画は見ていないので、ソフィア・ローレンがソフィア・ローレンたる
所以は実はよくわからないのだが。しかしやはり大女優の貫録なのであろう。
なんだか豪華な感じがしたよ、彼女が画面に出てくると。

これだけの女優陣を一度に集めて作った映画にしては、けっこう上手くやってたかもねえ。
あ、そうそう、よく知らない若手女優で、ケイト・ハドソンという人と、
ファーギーという歌手?が出ていたが、彼女たちも思い切りよくBODY!という感じで
気持ちよかった。
ケイト・ハドソンの方は、役柄のメイクではものすご大阪のおばちゃん系に見えるんだけど、
ダンスシーンでは体つきが意外に初々しくて可愛いの。
彼女の曲「シネマ・イタリアーノ」は「フォリー・ベルジェール」に並んでいい曲だった。

そして、黒一点のダニエル・デイ=ルイス。
この人も初めて見たんだけど、やはりこのくらいは可愛げのある人じゃないと
出来ない役柄だったねえ。だってただのマザコン・女ったらしだもんー。
これがちょっとでもマッチョ系に傾くと、きっとクサミが強くなっただろう。
この人で正解。

女の肉体と役者たちの豪華競演(演技を競うほど中身のある話じゃないが……)を
楽しんで吉の映画。
あとは曲のメロディもいいと思う。ただし、歌詞は訳のせいか原詞もそうなのか、
凡庸だと感じたな。この歌詞がもっと素晴らしければ、ストーリーも多少映えたかもしれない。

最後のシーン。
映画を再び撮り始めたダニエルを、全ての登場人物が見守っているところ。
話的には少々小首を傾げる流れではあるが、画的にはちょっと感動した。

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