ヨンデモ本。
池澤推薦。わたしはなぜかこの著者が女性だと信じ込んでいた。
その時池澤の本から収穫した課題図書が軒並み女性作家のものだったせいかもしれない。
なので、この短編集の最初の一編「鳥たちが聞いている」を読んで、
よくまあ女性の身でこんな過酷なことを……と見当違いのことを考えていた。
書いたことそのものが著者の体験かどうかは定かではないが、ナチュラリストとしての
経験がある程度以上ないと、こういった作品は書けないのではないか。
ここには12編の物語が収録されているが、全て何らかの形で自然をテーマにしている。
幻想的な話と現実的な話との振幅がわりと大きいのだけれど、
わたしは幻想に振れた話は好きで、現実に振れた話はそうでもなかった。
「鳥たちが聞いている」「ティールの川」「エンパイラのタペストリー」「空き地」
「クズリの教え」「ランナー」が好きな方。ちょうど半分ですな。
書き手として信用出来る感じ。
この感じは……ああ、梨木香歩を思い出させる。作品が似ているということはないけど、
根っこの一部分で通底していてもおかしくない。
梨木香歩と同じく、文章が静かだし。
多作家ではないようなので、日本語で読める作品はそう数多くはないようだ。
読める分は読んでみる。ちょっと好きな作家になるかもしれない。
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