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◇ 梨木香歩「水辺にて on the water off the water」

ヨンデモ本。

エッセイ集。
この人については何度も書いている気がするけど、今回もやっぱり同じことを言う。
いい書き手だ。

「作品」と感じるほどのエッセイはとても数が少ない。
すでに古典になっているようなものは別にして。……ま、わたしがどれだけエッセイを
読んでるんかい、というツッコミもありだが。

話芸としてのエッセイはわりにある。書いてるわけだから話芸ではないけれど。
思いつく例を挙げれば、アガワサワコ&ダンフミ「ああ言えばこう食う」とか、
柳家小三治「ま・く・ら」とか(あ、これは純然たる話芸か)、
佐藤亜紀「陽気な黙示録」とか。田辺聖子の諸エッセイ。
これは面白い、と言えるエッセイ。

だが、作品としてのエッセイとわたしが感じるのはそういうんじゃなくてね。
一行一行まで気を配っている、自分自身から紡いだ糸で誠実に織り上げている……そういうもの。
そういう気配が、梨木香歩のエッセイにはある。
これは相当に根気と集中力が要る仕事だと思うよ。さくさくとは書けないね。
……まあ多少内容は辛気臭かったりするのだけれども。

静かな森の奥の湖。

人間の精神を感じさせてくれる。
わたしはそれを手に取るようにして読む。
手触りで感じる、精神の形。

がんばっていただきたいです、末長く。

水辺にて―on the water/off the water
梨木 香歩
筑摩書房
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