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◇ 服部ゆう子「ラット一家と暮らしてみたら」

ヨンデモ本。
池澤推薦。今まで池澤推薦の本を何冊も読んで来たが、素直に面白いという意味では
もしかして一番だったかもしれない。

わたしは本を、家でも外でも読む。
家で読むのは小説。小説は一気に読まなければ面白さは半減だと思っているし、
その没頭が読書の真骨頂だろうと思うので。
外で読むのは知識本。エッセイ。知識本やエッセイは、やはり脳みそで読んでいるせいか、
細切れでも辛くないし、地下鉄は乗り過ごさないし、泣かなくていいので人前でも大丈夫。

この本はエッセイの類。つまり外読み。だが、何だか妙に後を引いて……。
中断するのがちょっと辛かった。最後まで読んでしまいたい、と思った。
いや、そんなにねー、内容がすごいというわけではないけど。

すごいわけではないけど「え?そうなの?」と目を見張る部分多数。
そんなに性格が違うのか、個体で。登場するラットたちの個性豊かなこと。
いや、個性というと、いたずら者、臆病者、暴れん坊、おっとり坊主、という程度のものを
想像するだろうが、保父を務めるラットがいるとは思わなかったぞ……。

基本はペットの観察日記なのだが、書き手が理系出身で、しかもある期間研究者だった人なので、
ほんのり学問的な味付けがある。そのバランスがいいんじゃないかなー。
観察個体に十分感情移入している。その意味では物語に近い。
しかし、書き方はあまりオーバーにならず、淡々と。そこも良かったかな。

研究書――とは言えないが、目から薄うろこが剥がれるくらいの爽快感は感じた。
お薦め。

ラット一家と暮らしてみたら―ネズミたちの育児風景
服部 ゆう子
岩波書店
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