原作は読んでいる。それも好印象だったし、西田敏行以下の出演者も良さそうだったし。
6月以来、映画も間が空いていたので行ってみた。
全体的には、なかなかな映画でした。邦画は基本的に小粒なものが多いけど、
たまには邦画でドカンというのがあってもいいよね。
いや、この作品もドカンというほどのものではないが。
でも金と時間をかけていたことは十分伝わった。うんうん。エライ。
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役者に、いい面子を集めた。
西田敏行は適役だろうな。原作と違いカリスマ性よりも人柄で引っ張る棟梁になっていたので余計。
ただ、もう少し体重を落として欲しかった。顎の下の肉が気になって気になって。
特に最初の方が。ダイエットすべきでしたな。
椎名桔平が久々にかっこよかったですよ。
「化粧師」で好きになったが、「魍魎の匣」でも「約三十の嘘」でもそれほどでもなく、
かっこいいと思ったのは誤解だったか?と思っていた。
が、今回は非常にかっこいい信長。信長が主人公の映画だとしたらこの方向では駄目だろうけれども。
馬に乗れるのも強みだねー。
……興福寺の阿修羅像を思い出していた。似てませんか。
福田沙紀というのは「メイド刑事」を見ていたので好感を持っていた。
ああいうアホなドラマを真面目にやる人は好きだ。
が、やはり演技的にはまだまだ不満があることと、地味な時代劇にはあの派手顔はちょっと。
特に口の大きさが気になった。憂い顔はいいとしても、満面の笑みはちょっとツライ。
大竹しのぶも久々……と思ったのだが、wikiに載っている作品でわたしが見たことがあるものはない。
なんでだ。あ「別れてのちの恋歌」は何とか覚えている。
今回は役どころとしては地味だったので、さすが!とまでは感じなかったが、
表情の複雑さはあったよね。
寺島進と山本太郎は好きな役者なのだ。
寺島進は、素だと濃すぎて(汗)いまひとつだが、いい役者だと思いますよー。
渋い役もコミカルな役も、ハートフルな役も何でも出来る。
今回もいい味出してましたわ。こういう人がいると映画が締まるよ。
山本太郎も、素だと軽すぎるが役者としてはいい。寺島進ほどではないにせよ、
いい味を出す役者だと思って見ている。カラダがいいから、そういう意味でも
重宝されてるんじゃないかな。
意外に、前田健が良かったですね。全然気づかず見ていた。
秀吉役を河本某が演ったのは、実はわたしはあんまり好きじゃないんだけど、
パンフレットのコメントが微笑ましかったので良いことにする。遠藤章造は微妙だが……
ベテランのおっさん方も良かった。
笹野高史が特に。情がありそうでなさそうで微妙な感じが良かった。峰打ちにして欲しかったなあ。
でも木曽義昌って、あんなに高齢ですか?イメージと違うが。
夏八木勲も、……実はこの人、最初に思い出す役柄が「富豪刑事」のおじい様役なのだが、
それと比べると、この役はかっこよかった。かっこいいままで描いて欲しかった。
福本清三が顔写真付きでパンフレットに載るようになったかと思うと感慨深い。
そうそう、緒方直人がねえ。
そんなに好きな役者じゃないけど、緒方直人と西田敏行の絡みは一番見ていて楽しかった。
いい組み合わせだと思う。出来ればもう少しいい見せ方をして欲しかったところだ。
……緒方拳、好きだったなー。西田敏行は緒方拳とも共演をしてましたよねー。
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セットは、どこからどこまでが実物で、どこからがCGなんだろう?
安土城の全景や転がる蛇石は当然そうだろうし、大黒柱建てる部分の全景もそうだろうが、
作業現場とかは?安土城完成のゆっくりとした俯瞰、灯火が並んでいるところは?
分からない部分が多かった。画像処理班もエライ。
指図争いの模型や指図のデザインも好きだった。
プレゼンの仕方として興味深かった。てか、あまりにもそのまんま金閣やん!と思った。
あれ燃やすの勿体なかったなあ……。
衣裳は半々。
信長の衣裳は美しく、面白かった。これでもかというほどお召替えをして、どれもきれいだった。
だが、福田沙紀の衣裳はもう少しなんとかならなかったのか。
わたしのイメージだと、あの役柄は15、6歳の感じなんだよね。
それに対して福田沙紀は実年齢19歳だし、大柄にも見えたので、違和感があった。
あの衣裳より似あう着物はいくらでもあった気がするが……。
信長のクオリティを考えると、大竹しのぶの衣裳ももっと何とかなるような気がする。
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残念な部分もある。
脚本が……凡庸。
もう少し。才気を感じられる台詞で語ってくれていたら、印象ははるかに上だったと思う。
すべてにおいて才走る必要はないんだけど、ここぞと言う時の決め台詞が、
どんなドラマでも使われてしまうような言い方だ、と感じた。
この映画のこの場所で使われなくてもいいんじゃないかと。
映画の中で数回は、鈍刀じゃなくて鋭利な刃物ですっぱりと斬られたかったよ。
脚本部分は、実は不満は多々ある。
わたしは主人公に、職人気質で気難しい、もっとカリスマ性を感じる人物を
イメージしていたけど、人間くさいキャラクターになっていた。まあこれはこれでありだけど。
ただ、映画では技量じゃなくて人柄でまとめているイメージになっていたので、
「神の手だ」という類の台詞はむしろ不要だったと思う。
だって「神の手」の真剣勝負に(大黒柱四寸切り詰めの場面)、ぶきっきょな若者が
勝手に手を出すようじゃおかしいんだよ、どう考えても。
あそこは棟梁の真剣勝負に皆が固唾を呑む、という場面であるべきだし、
もっと神々しく撮っても良かったところだ。そこを皆の力を結集して、と撮りたいなら、
「神の手」とは言うなと。ちぐはぐになってしまうよ。
田鶴に当たり散らすところも唐突な印象で、そこだけ浮いていた。
そういうキャラじゃないんじゃないか。いや、焦りがそういう行動を取らせるというのは
不自然というほどではないけど、心の動きがちゃんと描けていたとは言い難い。
山本太郎が「戦をしに来たんじゃない!」と西田敏行に言う場面も、
あのタイミングでは西田敏行は木曽から帰ってきたばかりなんだから、
そんなこと言われても……と思うし、
福田沙紀がそのことで父を責めるのも納得出来なかった。
だいたい城造りに来ているということはつまり、戦の守備側陣地を築いているということで、
信長はまだ天下統一前なんだから、戦をすることは当然なんだよ。
それで「戦に来たんじゃない!」は片腹痛い。当時の大工さんが殿様に仕えるとしたら、
工兵隊の役割ももちろん負っていたことだろうよ。
水野美紀の存在が上手く描けているとは思わない。
原作を読んでいるので、この人のことはいつ匂わせるんだろう……と不安だった。
あれは普通に見ている人には唐突な展開ではないですか?
水野美紀の動きの素早さには驚いたが、そうですか、アクション出来るんですか。意外。
刀の動きが、まるで早送りをしているのかと思うほど素早かった。
山本太郎がカワイソウで泣けました……。
長々と書いたが、総じて、がんばった、いい映画だと思います。
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