ヨンデモ本。
ファンタジー……なんだろうか。ある意味ファンタジーだろうな。
物語としての厚みはかなり違うけど、「赤毛のアン」を思い出していた。
どこか重なる部分がある。
本作は、タイトルからして教訓がたっぷり盛り込まれていそうで、
正直腰がひけていた。なのに何故読んだかというと、例によってネット上の感想から。
書いたのは男性。男性がこんな風に感じた本はどんな本だろうと。そういう興味で読んだ。
(今回この文章を読みなおしてみたけど、真摯さを感じる、なかなか良い文章ではなかろうか。)
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彼ほど心に沁みたわけではないにせよ、ね。
読んで気持ちいい話だった。魔法も出てこないし、異世界に行くわけでもない、地味な話。
でもちょっとだけ、こういう場所にもいいな、行ってみたいな、と思わせる。
メープルシロップを味わってみたくなることは当然として、樹液もどんなかと思うし、
花が咲き乱れる草原はやっぱり歩いてみたいし、
食べ飽きるほど採れるキノコをシチューにして飲みたいぞ。
カエデの樹液が木の中を登って来ること。
ずっと不機嫌だったお父さんが歌を歌うこと。
シカやキツネに会えること。
そこにあるもの、住んでいる人、そのたたずまい。
それらが全て奇跡。
物語の醍醐味は、「この作品世界に行ってみたい」と思わせるのが究極だと思う。
小学生だった頃、どんなに“誰も知らない小さな国”へ行きたかったことか。
宮崎駿が描く世界へ入って行きたかったことか。
本作は、願いの強さという意味では上記二つの作品世界には及ばないけど、
やはり行ってみたいと思わせてくれたのは、良質な作品だから。
良質な作品には真実がぽろぽろと含まれる。それが時折光る。
ほんの少し、寄り道をするように読んで欲しい。
心から「会えて嬉しい」と言ってもらえること――
言葉だけではなくて、表情で、動作で、声の調子で、全てを使って、
そう言ってもらえることは、多分宝物だ。
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