普段MOVIXに行っているので、ワーナーとかTOHOとかのシネコンはチェックしてない。
この映画に気づいたのは「世界ふしぎ発見」のおかげ。
あの番組はこのところ映画とタイアップ多すぎじゃない?とは思うけど、今回は感謝だ。
何しろアン・ブーリンですから!それがナタリー・ポートマンですから!
久々エリック・バナですし!まあスカーレット・ヨハンソンも。
これは見ないと、と言って少々離れたワーナーマイカルまで出かけて行く。
今回初めてワーナーに入ったのだが……なんだかずいぶんうるさかったねー。
慣れれば平気だろうけど、上映前の広告の作りがウルサイ。ごちゃごちゃ言いすぎ。
音が大きくて耳が痛い。幸いなことに本篇はうるさい映画じゃなかったので気にならなかったが。
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美術とキャストはうっとりと見た。美しかった。目の部分は非常に満足。
かなり幸せな2時間といっていい。目はね。頭はいまいちだなー。
例によって話があかんよ。キャストと衣装と史実によっかかって物語ることを放棄している。
映画は物語らなければ。生き生きとした人間を語らなければ。何のための創作なんだよ。
プロットのみを並べている。キャストの演技と美しい舞台美術によって
目立たなくなっているが、人間の描き方が薄っぺらい。
姉妹の葛藤。一族の野心。ヘンリーの感情。さっぱり深みがないではないか。
「あの子は頭が良くて野心家だ」……これをお父さんに言わせているだけじゃダメなの。
頭が良くて野心家、ということをその台詞がなくてもわかるくらいの場面がないと。
例えば王が屋敷を訪れた時。お父さんに王の歓心を買うように言われて、
戸惑う乙女心、それと同時に芽生える野心。この辺なんか、わりあい単純に書ける部分だと思うが。
そこを書かずに安易に王の出迎えの場面に繋げてしまう。ダメだなあ。
創作はディテイルだよ。その扱いの如何で結果は天と地ほども違う。
史実が、あるいはあらすじが十分ドラマティックだからといって、細部を忘れてはだめだ。
これで細部もきちんと構築してればねえ。名作になったかもしれないのに。
物語るという種類の才能がある。でもそれが出来ない脚本家が多いんだろうな。
プロットを組み立てることだけを仕事だと思ってやがる。
家を建てたら内装も整えないと住めないよ。内装を放りっぱなしにするのはやめてくれ。
でもまあとにかく美術が良かった。
何度も言うけど、イギリスものはロケがあちこちで出来てほんとにお得……
例によって大聖堂を王宮として使うのに違和感はあるわけだが。
今回はいろんな「部屋」が使われていた。あの頃のインテリアは現代に対して古いと言えば古い、
現代に近いと言えば近い、というような気がして好きだ。
大抵の映画では、わりとこの頃の内装は無愛想に(手抜きとも言う)作られている気がするけど、
この作品では「布」ががんばっていた。布をたっぷり使って柔らかさを出していた。
そう、実際このくらい布を活躍させないと部屋の居心地は悪そうだよね。
木の色が黒っぽいしね。
衣裳にほれぼれ。一着だけ「へ?チャイニーズ??」というデザインはあったが、それ以外は花マル。
こういう場合、男性の衣裳は力を抜かれがちな気がするんだけど、ヘンリーの衣裳は
すごかったなー。女性陣の衣裳より派手。やっぱり王様だから、このくらいしてくれないとね。
いや、堪能しました。
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ナタリー・ポートマンはやっぱり好きだなあ。
本当はもっと強烈に成り上がるキャラクターの方が似合う気はするけどね。
作品の中で、ブーリン家の位置・格付けがいまいちよくわからなかった。
郷士と貴族の間くらいの感じなのかな。
でもそのわりにフランス宮廷とツーカーなのが解せない……。皇太后から手紙をもらうとか。
最初に会った時とフランス帰り後の違いってわからなかったよ。
そもそも2ヶ月フランスに行っただけで、そんなに人間が変わるわけないでしょう。
どうせ都合よく史実を改編しているんだから、フランス行きをせめて2年くらいにすることは
出来なかったのか。しかも2ヶ月しか経ってないこと、台詞で言わなきゃ
気にならない部分だったのになあ。
エリック・バナ。「トロイ」のヘクトールの時、すごくかっこ良かった~。あん時は惚れたね。
今回のヘンリーは……王様っぽかったし、かっこ良かったけど、
ヘンリー8世に見えたかというとちょっと違った。
ヘンリー8世は肖像画を見る限り、ふてぶてしさの権化のような人だから、
エリック・バナのような、目にどうしても繊細さが浮かんでしまうような人には合わない。
ま、この話はヘンリーに魅力がなくてもつまらない話になってしまうし、仕方ないけどね。
でもエリック・バナのヘンリーは、いつでも苦悩しているように見えた。
ヘクトール役とこれしか見てないもんだから、コメディアンである姿が想像出来ない。
「エンタの神様」に出ているような、芸人とも言えない芸人のイメージで
語っちゃいけないんだろうが……
スカーレット・ヨハンソン。「真珠の耳飾りの少女」はすごく良かったなー。ぴったりだった。
が、実はこの人の顔があまり好きではない。口元がセクシーなのがチャームポイントなんだろうが、
反面だらしない口元でもあるよね。口を半開きにしていることが多いので、
あんまり頭良さそうに見えない。寝室での流れるような金髪は非常に美しかったけど。
クリスティン・スコット・トーマス。好きなので出演していたことが嬉しかった。
この人が一番過不足なく描かれているかな?いや、不足は不足だけど、
そのなかでなかなか健闘していた気がする。キャサリン・オブ・アラゴン役の
アナ・トレントも良かったよ。
(ところで、クラフト・エヴィング商会に「アナ・トレントの鞄」という本があるんだけど、
このアナ・トレントは彼女のことなのか?)
だが、若者3人(弟のジョージ、ウィリアム・スタフォード、ウィリアム・ケアリー)の
区別がつかなかった。区別というより、誰が誰なのかわからなかった。
弟と、旦那のケアリーはいいとして、ウィリアム・スタフォードってなんで突然
結婚するんだよ!という感じだった。
あ、そう言えば。
ずっと楽しんで見ていたんだけど、近親相姦の部分はいやだった。
いくらなんでもそこまでやんねーだろ、と思った。逆にそこまでやるかもしれない、と思えるほど
アンの死への恐怖を描けていたなら成功だったのかもしれない。
楽しめましたが。話はもっと詰めろ。と言いたい作品。
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