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◇ スティーブン・キング「図書館警察」

初キング作品。1冊だけ読んで言うのも間違っているかもしれないが、
……なんで売れてるんだろ、この人?
さっぱりわからん。

まあ、わたしの本についてのくじ運は、多分あまりいいとは言えないと思う。
なにせ北森鴻の初作品に「支那そば館の謎」を選んじゃうくらいだからね。
今回も、たまたま面白くない部類のものを手にとってしまったのかもしれない。
「キャリー」とか「ミザリー」とかは面白いのかなあ。あるいは「グリーン・マイル」とか
「スタンド・バイ・ミー」とかならまた違うのか?うーん。

元々怖いのが苦手で、ホラーもサスペンスもほとんど読んだことはない。
だから、「好きになれない」というなら想定の範囲内ではあったのだが……。
(ちなみに、キングは描写に凝る作家らしいが、わたしの嗜好はあっさり系なので、
まずここで向かないというのも一応念頭に置く。)
が、好き嫌いとは別な所で、「達者に書いている」とか、「この部分が好まれてるのだろうな」と
感じるところもあるはずなのだ、普通ならば。しかし読後それが全くない。怖くもない。
ホラーが怖くなければ意味がないのではないか。
つるんつるん。ところてんみたいに、結局手の中に何も残らない。

かといって、ダメダメと言いたいかというとそういうわけでもないのだ。
たしかに個人的に言えば、これはドタバタギャグで読みたかったネタだなー、というのはある。
言い回しに時々出てくる下品さもちょっと引く……
一番ゲッソリした部分は、図書館警察(官)を、単にモンスターで良いところ、
幼児性的加害者にしてしまうところ。悪趣味やなあ。この程度で扱うのなら
(このあたりをトラウマとして上手く描けているとは言い難いし)、
むしろ超自然的存在にしておいた方が怖かったろうに。

……駄目出ししたいところはこのくらいのもんで、文句つけ魔の自分としてはすごく少ない方。
でもこういう「好き」も「嫌い」も「上手い」も「下手」も言いようがない無色透明さって、
売れている作家のものだけに意外。

こないだ読んだ久間十義も似たような感想になった。
「良さがさっぱりわからない。しかし悪さも別に見当たらない」。
読んだことすらすぐ忘れてしまいそうな存在感のなさ。
こういうのって、透明人間に正対しているような、そこはかとない不気味さがある。
いや、逆か。そこに林檎があって、明確に目に見えているのにも関わらず、
手を伸ばして触ろうとしても物体の感触がない不気味さ。
いや、これはホラー作品としての不気味さ、怖さとは全く別の話ですよ。

わたしに見えない何を見て、キング好きのみなさんはこの作品を好きなのだろう。
不思議だ。

怖いっていうか、サスペンスフルという意味では、ブラッドベリの「何かが道をやってくる」の方が
雰囲気があった。あれも図書館が対決の場所なんだけど。
素材的に、ああいう風にファンタジー風味にするんじゃなければちょっと無理があるよねえ。
素直に子供の話にすれば良かったのではないだろうか。主人公を少年にするだけで、
ずっと自然な話になったのではと思うが……

キングは1冊で終了することにする。それほど面白くないなあ、と思いながら読んで、
5冊目にドカンと面白かった宮部みゆきの例から、最低3冊は読もうと努力しているのだが。
まあ食指が動くものに巡り合ったら、その時に改めて。

図書館警察
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