この間、テレビで
美しきルネサンスの都に
イタリア芸術とネオジャパネスクが競演!
表 博耀の華麗なる挑戦!
という番組をやっていた。
……どーでもえーが、タイトルもう少し何とかならなかったのか。責任者出て来い。
こんなタイトルじゃパチもんにしか見えんわ。
表 博耀――おもて・ひろあきと読むらしい。
番組を見て思ったが、なんだか面白い人ですね。作品というより、存在が面白い。
融通無碍というか、天衣無縫というか……色々な分野に手を出すアーティストは多数いるけど、
表の取り組み方は、なんだか他の人とは違う気がする。枠を決めないイメージ。
普通、まずよって立つべきホームグラウンド(本職)があって、そこに腰を落ち着けたまま
他に手を伸ばすでしょう。
だが彼はポンと飛んで新しい場所に着地。またポンと飛んで別な場所に着地。
そんなことを繰り返している気がする。
経歴も妙なんだなあ。
中卒で理容師?美容師?として働き始めたらしい。20歳そこそこで店を複数経営し?
ヘアメイク(ヘッドアート?)で有名になってきて?
……で、なんだか知らんけど、今はプロデューサー。
ド派手な打ち掛けは作るわ、アクセサリーは作るわ、茶道具は作るわ、家具は作るわ
(このあたりの「作る」はプロデュースという意味)、
ファッションショーはするわ、当然ヘアメイクは担当するわ、振り付けはするわ、
そしてここ数年は「ネオジャパネスク」と名付けた総合舞台パフォーマンスを持って、
世界を年1回くらいで回っている。
関西弁でちゃかちゃか喋りまくる、変なおっちゃんです。
彼は「温故創新」を唱えている。伝統日本と新しいものを融合させていくという方向。
お題目としてはわりあいに聞くような内容だけどね。
具体的にはこんなんです。たとえば打ち掛け。派手。
が、これを見て、現代もん嫌いなわたしになぜか拒否反応が起こらない。
どーみても……悪趣味スレスレな感じだが、けっこう印象がいい。
これがねー、フィレンツェのピッティ宮に展示されていた時。ヨーロッパの絢爛たる室内装飾に
負けてなかったのが印象的だった。負けずに金ぴかだからという理由もあるだろうが、
一番重要だったのはボリュームかな。このボリューム感は、今までの日本にはない。
十二単だって、実際には重くて、そういう意味でのボリュームはあるけど、日本のテイストは
基本はミニマムなんだよね。ミニマムが目指すべきものとされてきたお国柄。
その中で、日本的な素材を駆使してここまでボリュームを出して来たかと、ちょっと面白い。
(ネット上より番組で見た方が数段きれいだった。ネットでは色が汚い。)
これ、けっこうどこの風景にも合うんじゃないかと思いながら見ていた。
ピッティ宮では溶け込んでいた。桂離宮でもいけそうな気がする。ヴェルサイユ余裕。
ニューヨークの街角でも大丈夫。紫禁城なんかは一番はまるかもな。砂漠。熱帯雨林。
風景としてボリュームがある場所ならどこに置いても様になる。
しかも、とんがっていないところがいいね。いかにも前衛!の喧嘩ごしではなく、
キッチュでユーモラスだ。伝統と相反するものではなく、4分の1程度重なっている感じ。
もっともそのせいで、パロディくささが漂うきらいはあるんだけど。
コペルニクス的転回という類の創造ではない。
しかし4分の3程度ずらした創造もいいのではないか。
少なくとも、今までの基準点を否定する必要がないことは、見る方は(いい意味で)楽だよ。
本人は舞台でも動く。舞うというのか、パフォーマンスを行う。
水行もする。……水行?何だかとにかく滝にうたれていたシーンがあった。
月に数日は自分の店(=床屋さん)に立つそうだ。で、普通のカットをしたりしてるわけ。
それに加えて、お茶を点て、本番直前まで振り付け指導にあたり、
それからなんと(具体的な名前を忘れたが)、十二単などを着付けられる(資格を持った?)人らしい。
舞台上で、直衣と十二単を着付ける姿をパフォーマンスとしてやっていて、
これはありだなあと思った。着付けを演目にするというのは盲点。
しかもフィレンツェでは、フェラガモ一族の若者を直衣のモデルに使っていて、そのあたりも
軽やかさ(と共に商魂)を感じる。固定観念でいえば、そこは絶対日本男性を
使わなければならないところでしょ。
なんだかもう、本人がどういうヤツなのか、さっぱりわからないよ。
本物か、偽物か。うーんうーん、今の段階で言うのは難しいなあ。
本人には失礼ながら、調子いい人の気がするし。でもやってることはなかなか面白そうなんだよな。
今後、どうでしょうね。出てくるんだろうか。多少、注目。
……が、ここまでやってると、「この人、長生き出来そうもない……」とひしひしと感じてしまう。
「早口は早死に」という言い方もあるらしいもの、ここまであれこれやっているとなあ。
普通の人間が脳の何パーセントを使っているか知らないが、この人は通常人の倍くらいの
稼働率の感じがする。変な脳ミソの使い方というか。
無事これ名馬という言葉もあることだし、その辺はうまくやって欲しいよ。
コメント