ちょっと待て――――――――――――――――――――――――ッ!
これ話がめちゃくちゃやないか!何がどうなってこうなっているのだ?
脚本の中島丈博!一体何をとち狂ったのだ!?
突っ込みどころは、かのナショナル・トレジャーにも匹敵する……いやいやそれは褒めすぎ(?)。
いくらなんでもあの話には追いつけない。あれはツッコミという意味において天上天下唯我独尊。
でも、相当な線ですよ、この話も。
父親が年端もいかぬ子の目の前で自殺して、復讐を否応なく背負わせるというのも
そもそも児童虐待だと思いますけど(親の心情として、そういうのって出来るもの?)、
最後あたりが、えええええっ!?ばっかりですよ。
なぜ浪路に会いに行く雪之丞!そこでアンタが行っても何もいいことはないぞっ!
ってか、変だよっ!復讐に利用したんでしょ?最初はそのつもりで近づいて、段々本気で
愛してしまうというのは(ものすごくありがちなパターンだが、それなら)わかる。
が、なぜ真相を告白し懺悔するのみ!なのだ。浪路が全く救われないやないか!
救われないどころか、地獄に突き落としてますがな。雪之丞、苦悩のあげくになぜそれをする!
しかもそれだけしておきながら、死体を長持にいれて父親に送りつけるのかい!
人非人!外道!あんな涼しい顔でそれをするか。
地下で浪路も浮かばれまい……。
土部を追い詰めるところだってそうだよ。
あそこで「命をいただこうとは思いません。ただ一言悪かったと」……おいっ!
有り得んだろ。これが「生きてこの世の生き地獄を味わうがいい!」なら殺さないのもわかる。
謝るだけで、両親が成仏するんかい!他の手下二人(名前忘れた)をあくどく死に追い込んで
おきながら?なんで?整合性が……
あの段階からどうやって逃げおおせるというのだッ!
あれだけめちゃくちゃ、きったはったをやった後だよ!
他に目撃者がない人里離れた場所というならまだしも、武士のお屋敷内、たとえ刀を持って
向かってきた用心棒連を皆殺しにしたって、雪之丞を座敷まで案内した腰元とかいるだろう。
もちろん結果としてみな逃げるだろうけど、人間、パニックになった場合、
ある程度の状況がわかるまでは動けないものです。
ゆえに、斬り合いに参加しなかった人々も断片的な情報は抑えているはず。
騒ぎの中心に雪之丞がいたことまで誰も知らないことにするのは無理だよ。
でも、捕まるのは闇太郎だけなのね……
ああいう話にするんなら、最低限、脱出する時に雪之丞と闇太郎が、
「俺が囮になる」「いいえ、これはわたしの復讐ですから」「いいんだ。俺は死に場所を
探していたんだから。……そのかわりあんたには立派な役者になって欲しいんだよ」
とかなんとか、お約束のシーンがなきゃだめじゃん。
左團次さん、のうのうと逃げ出して来た雪之丞に「宿意を果たしたからには今後は芸道を……」とか
ワケノワカランことをかますの止めて下さい。そんな呑気なことを言ってるバアイと違う。
逃げろ!指名手配されるぞ!舞台で悠長に踊るなッ!
雪之丞!市中引き回しの闇太郎に手を合わせてオワリかい!有り得ん。有り得ん。有り得ん。
一体どれだけ世渡り上手なのだッ!!
最後、書付を海に飛ばして、両親の呪いから、はい、サヨウナラ。……ナンデス?それ。
それであっさり終わるようなもんデスカ?
悔しかったら入水自殺でもしてみやがれ。(それはそれでワケワカラン展開だが。)
なんでこんな話になっているのだろう……。ずいぶんと何度も映像作品になっている話らしいけど、
揃いも揃って、みんなこれほどトンデモなのか?
話がトンデモでも、役者の力量によってカバー出来る場合も時々あるけど、
今回はどんな役者を持ってきてもあの話に説得力を持たせるのは絶対無理だよ。
どーしてシンプルに、復讐に燃えるドロドロとした怨念の塊の雪之丞じゃいけなかったのかねえ。
その方がずーっとまともな話なのに。
……はっ!どろどろした役をやらせるなとジャニーズから横槍が入ったとか!?
いや。まさか。まさかね。いくら事務所がアホでもまさかそこまではね。
……ただ、脚本の中島丈博は少なくともベテランである。おそらく仕事はまともな方だと思う。
それがここまでになっちゃうってのはよっぽど……何かがないと納得出来ないなあと思って。
※※※※※※※※※※※※
えー、それはそれとして滝沢はですね……。
わたしは(忸怩たるものを感じつつ言うが)けっこう滝沢、好きである。
理由の大部分を占めるのが顔の美しさ。彼の顔はパーツが美しく、バランスが美しい。
これが両立しているのは、実は珍しい。左右の対照もなかなか見事な部類。
わたしが迷いなく「美」と表現出来る唯一の日本男性芸能人だな、多分。
今回の役柄、かなりがんばっていたので感心した。
この人、才能という点では演技の才能はあまりないと思う。演技の才能というのは、
オーラというか、催眠術というか、空気を醸し出す能力。ある人にはあってない人にはない。
高校演劇レベルでさえ、これのあるなしは自明。ない人が一所懸命演技しても、空回りしちゃって
結局ダメなんだよね。他人をノセられない。
彼にはおそらくこのオーラがない。ま、訓練によっては多少は獲得出来ないものでもないけど。
が、努力でかなりの線までカバーはしているなあ。
今回の役柄は相当にハードルが高いと思った。なにせ女形ですぜ。歌舞伎ですぜ。日本舞踊ですぜ。
着物も、一人二役も、立ち居振る舞いもみんなハードル高いよ。それをかなりまともにやっていた。
女形というのはキッチュな存在なだけに、上っ面だけ真似ると安っぽいことこの上ない演技に
なってしまうと思うのだが……。見ながら、わたしは玉三郎とか笑也さんを思い出していた。
もちろん及ばないのは間違いないけれど、全く駄目!なら玉三郎を思い出しもしないと思うんだ。
比較対象として本職の女形が浮かんでくるあたり、それなりのレベルまで持ってきていたという証拠。
「技術力」さえ言えず、腹式発声も出来ない誰かさんに、ほんっと爪の垢を煎じて飲ませたい。
が、話として闇太郎と二役にする意味があるのかなあ。
わたしはどう考えても、ないと思うのだが。そっくりなことに意味があるエピソードないでしょ。
顔がそっくりなことを利用して浪路とカラむ、とかあるなら有効だけど。
闇太郎が浪路の前に現れた時、瓜二つであることが全く触れられないのはむしろ不自然なのに。
あれかねー。三蔵法師を夏目雅子が好演した為、日本では三蔵法師を女優がやるのが
定番化したのと似たような感じで、最初二役であたったことで、定番になってしまったのかなあ。
戸田何某は、そう悪くはないと思ったんだけど……強かに見えすぎて、話の説得力がなかった。
笑顔が、こう言っちゃなんだけど、ものすごく企んでいるように見えたんだよね。
むしろ大奥で権力を握り、采配を振りまくる若年寄というような役が合っているのではないか。
あれで、滝沢のそれほど説得力のない手練手管(演技的に手練手管に見えない)に
ころっと騙されて、あそこまでのめりこむのは……
わがままなお嬢様という部分は合ってたにしてもさ。
あの役なら、純粋無垢な、人を疑うことを知らないキャラクターの方が脚本として
妥当だったんじゃないかね?役者も当然おっとりぼんやり型に変えて。
1時間45分という尺がやはりネックだったか。
恋愛部分だけでも、出会って→再会して→惚れて→寝て→再度逢瀬を作り→恋い焦がれ→
家出→疑惑→幽閉→裏切り→対決→自決。……この長さではちょっと無理っぽいですね。
NHK得意の6回シリーズとかだったら適当だったかな。6回(6時間)って、
一つの話を描くのに良い長さのような気がする。2時間ドラマでうまく作ることも不可能ではないけど、
(こないだの「しゃばけ」とか。でも、あれもちと足りない気はしたからね。)
それで収まる内容は、小説でいえば短編~薄めの中編がいいとこ。今はみんな欲張って、
何でもかんでも詰め込もうとするから……
今思いついたんだけど、もし小説を2時間の映像にしようと思うなら、短編が狙い目かもね。
映像表現を含めて丁寧に作れば、いい作品を作れる気がする。
視聴率がついてくるかはまた別な問題だが。
でもたまに、きれいな画と詩情で勝負するドラマもあっていい。見てみたい気がする。
見たら見たで、「内容がない」と腐す可能性もあるけど。
コメント