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< しゃばけ >(ドラマ視聴)

ほらぁ、やれば出来るんじゃん!……と思った。

誠実にがんばりました、というのが伝わってくるドラマ。
他のドラマで透けて見える、「ほら、こうすれば視聴率上がるでしょ?」的な浅薄さは
ほとんど感じられなかった。
他も、これくらいちゃんと作ってくれればいいんだけどなー。

主役がジャニーズと知った時点でめっさ不安になりました。ほとんど諦めたと言ってもいい。
主役がジャニーズでまともなドラマになるわけが……とまでは言わんが、そーだなー、
数字に根拠はないが、まともになる確率は20%前後ではないか。
何しろジャニーズは職業がアイドルなわけでね。歌手でもなく役者でもなく、アイドル。
アイドルという職業のなかではプロですが、役者としては素人。
それで主役は不安でしょう。かなり。

原作は未読。が、前々から面白そうだと思っているので、読む順番が来るのを楽しみにしている。
それをドラマでぶち壊しにされたくないよー。……と、早手回しにがっかりし、
放映日からけっこう日が経ってから、期待と不安を抱きつつ、ようやく録画を見た。

おおっ、なかなかいいじゃないですか!

配役がいいと思ったな。視聴率稼ぎの為の配役じゃない。みんなはまっている。
ちょっと今時を意識したかと思うのは早乙女太一だが、この人だって、なるべくしてなった役柄で、
無理に役に押し込んだ感がない。彼の鈴彦姫というのは、もちろん女優でも出来た役だったろうけど、
もしそうだったら多分あれほど白塗りは出来ない。そしてあの役はびっちり白塗りの方が合う。
つまり早乙女太一にして正解だ。(仁吉への秋波シーンはかすかにハズカシかったが。)

お笑い芸人の多さも役柄が奏功。というのは、お笑い芸人が出ていると、
見ていてどうしても素顔が意識されてしまうが、この場合みんな「あやかし」なので、
素顔がわからないほどのコスプレ。おかげで素の部分を意識することなく見られた。
宮迫が白塗りってのは非常にいいわ。演技という点では、彼はわりと上手いイメージがあるが、
何しろ顔が濃い人だから……。あの濃い顔を見ていると、本人に非はなくとも宮迫にしか見えない。
今回の歌舞伎メイクでそれも解決。山田花子も同じ理由で役柄の勝利。
山田花子なんかは演技という意味でも役柄が奏功。ありがたいありがたい。

と、主役の手越何某だが、彼もね。
これは十分及第点だと思った。上手い演技というわけではなかったけどさ。
でもちゃんと演技をしようとしているよ。役になろうとしている。
役作りをしないと公言する奴に爪の垢を飲ませたい。
「○○という役をしている××にしか見えない」ということもなかったし、
アイドル特有の自意識過剰も漂わなかった。
あまりかっこいい役柄ではないが、それをそのまま受け入れて、ひたすらいい人に徹した、
不器用で素直な演技だったと思う。よーやった、と言いたい。
それから最後の格闘シーン、にらみつける表情はすごく良かったよ。
(……饅頭屋の息子と二人のシーンは、正直ツライが……)

脚本も良かった。
最後の方で説明されるまで、「なぜこれほどあやかしたちが一太郎を大事にするのか」が
わからずもやもやしていたけれど、話がああなってみれば説明がないのはしょうがない。
ラスト、墨壺の始末をどうつけるのか予想できないまま見ていたが、あの終わりは良かった。
泣けたよ。付喪神になれなかった墨壺の恨みは絶対に消えるものではないと思っていたのに、
「もう少しで付喪神になれるほどまで永らえて来られたのは、今まで使って来てくれた人が
大事に大事にしてくれたから」という論理で発想を転換させてしまう。
正直、それで墨壺が納得するには弱いと思うよ。
でも、棟梁と墨壺の映像を長めに見せてくれることと、その前に別な墨壺を別な棟梁が自慢する伏線を
張ってくれているおかげで、その転換に納得出来る。

ディテイルが良かった。
鈴彦姫とか白沢、犬神のCGがきれいだと思ったし、蒲団の模様とか、屏風のぞきの足袋の黄色とか、
一太郎のお粥に松の実が入っている事とか、墨壺を実際に使って見せているところとか。
物売りの口上をしっかり挟んでいるところとか。
真矢みきが神社で祈る所も、1回だけ映すのと、四季をちゃんと映すのでは説得力に雲泥の差が出る。
他にもいろいろありますよ。
こういう所をちゃんとやれる脚本家は偉い。久々に褒めたい仕事を見た。

ドラマに感動したというよりも、ドラマの作り方が嬉しかった。ありがとうと言いたい。
こういうものを見たいんだよ。視聴率のことしか考えてない、やっつけ仕事ではなくて。

ところで、第2弾はいつ頃放映なんでしょうかね?
見逃したくないんだけど、HPにもその情報は全くないようだ。
わたしはてっきり1週ごとに第3弾くらいまでやるのだと思っていたのだが。
まあでもじっくり作ってじっくり撮ったのを見せてくれた方がありがたいけどね。
次もぜひ、このくらい丁寧に作った作品を見せて欲しい。

ところで、「しゃばけ」って、娑婆気だったんですか……
わたしはずっと「しゃ化け」だと思っていて、「しゃ」ってなんだろう、と不思議だった。
タイトル、面白いスタンスだな。作家の個性がほの見える。

しゃばけ (新潮文庫)
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