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◇ COCO「今日の早川さん」

(基本前提・その1)

わたしはブログ本はあまり評価しない。ブログが本という形式をとるべきではないと思うからだ。
ブログというメディアと、書籍というメディア。本来の媒体が違うんだから、
相応しい内容というものがそれぞれにあるはずで、書き手もそれを念頭に文字(絵)を綴っているはず。
わざわざ変型させる必要はない。

ブログは薄きをもって良しとする。
もちろんただ薄けりゃいいってもんじゃないですよ。わたしは、ネットの存在理由って、
つまるところ個々人の意見の表出にあると思っているけれど、そう言いつつも、

   今日は~、何だかとってもつかれました☆
   早くお風呂入って寝よー☆

的な内容のみで構成される一般人(⇔有名人)のブログを見ると、
「このブログは一体何の必要性があって……」とか思わず深く考えてしまうものね。
まあブログなんてのは間違いなく自己満足の世界で、誰がどんな風に書こうと余計なお世話だけどさ。
薄いっていうのはこういう方向ではなく、ネット上で読みやすい薄さがあるでしょう、ってこと。

ブログでは、流し読みで内容がつかめる程度がベストだと思うんだよね。
だから自分で書く場合も改行を多用するし、本来なら行分けで書くのは邪道だと思いつつ、
読みやすさをとって、読点で行分けをする。ぱらっと感が必要でしょ。

が、本になるとそのぱらっと感は邪道なのだ!本はちゃんとした密度がなければ!
実は、わたしは「僕の見た秩序」というサイトを恒常的に見ており、
そこから出たブログ本「ゆかいな誤変換。」という本は、出た途端に買ってしまったのだが、
……実際に自分の本棚に入れてみると、その内容の薄さが気になって気になって。
ついに人にあげてしまいました。内容自体は好きなんだけどねえ。でも本としては……イヤ。
自分の本棚には気に入った本だけを入れておきたい。

以上のような見地から、ブログ本という存在は評価出来ない。

(基本前提・その2)

マンガは本じゃない。絵本も本じゃない。

わたしにとっての本の定義は「字を主体として構成されている」。
字のないマンガ(絵本)は有り得ても、絵のないマンガ(絵本)は有り得ない。
つまり主体は文字ではない。つまりマンガ(絵本)は本じゃない。

と、強固に思っているわたしにとっては、「好きな本は?」などの問いにマンガを挙げていたり
するのを見ると、「は?」と思う。今までの読書経験に言及している過程で
好きだったマンガの話になるのはそれなりにありだが、基本、本は本だろう。

(ついでに言えば、わたしはその時点でしか価値を持たない内容の物は本と言いたくないので、
狭義においては、ガイドブックやパソコン指南書なども本ではない。当然雑誌も本ではない。)

さて、この基本前提その1・その2を踏まえて。

先日、本屋で「今日の早川さん」を立ち読みしました。
これはネット上某所で……って、なんのことはない、web本の雑誌の横丁カフェ
http://www.webdokusho.com/shoten/cafe/163_okuma.htm
で紹介文を読んで、微妙に気になっていたから。
だが、わたしはこの文章のなかの「コミック」という文字を見落としていた。
立ち読みをし、初めてマンガだということを認識する。オススメ本の紹介で取り上げられてたのにっ。
マンガは本じゃない、という基本前提からすれば、オススメ本でマンガを薦めるのは反則である。

※※※※※※※※※※※※

……で、読み終わった感想。
いやあ、面白いですねえ(^o^)。なかなかに笑えました。途中で止められないくらい面白かった。
読み終わってしばらくにやにや。家へ帰って早速ネットで本家を探し、そこで最初から読み返した。
すっかり意識から消え去っていた自分のオタク性の再認識と同時に、
自分が、オタクとしてはかなり薄いところにいると認識し、その微妙に相反する部分を楽しむ。

リスト作りがオタクの証左だとあったのは「ええええっ!」でした。そうだったのか……
……そりゃたしかに、「これから読む本」を1000冊以上もリストアップして、
下手すると小一時間もそれを睨んで、どういう順番で読んでいこうか考えているなんて、
自分でもアヤシイとは思っていたけどさあ。
……ええ、ありますよ、「本好きへの100の質問」がわたしのブログにも。
誰が喜ぶでもないというのに、わざわざ質問に答えてあまつさえそれを公共の場で晒している。
自己満足以外の何物でもない。
……そーだよ、仰るとおり読んだ本をデータベース化しているよ。わたしの場合は、買う本は
滅多にないから、買った本リストは作らないけれど。

1年くらい前、読んだ本データを消してしまった時はショックだったなあ。
データと言っても、作り始めたのがたしか4~5年前だから、700冊弱しかなかったけど。
うわああああっ!と叫んで、茫然。何とか文字データを残せたのが全体の3分の1くらい。
その後、残ったデータを手打ちで入れなおし……なんと悲しいことよ。
現在、記憶を頼りに地道にデータ復元中。データ消去がなければ900冊近くにまで
育っていたはずが、まだ500冊弱までしか戻ってない。泣く。

しかし「今日の早川さん」はオソロシイね。何が恐ろしいって、上記のような自分語りを
誘発してしまうところが。
結局シュミのブログなんて書いているわけだから、何を言っても説得力などないのだが、
わたしは一応、出来るだけ自分語りは自重しようというスタンスをとっている。
が、これを読んだ後は「自分はどうだ」と語りたくなってムズムズしてくる。
オタクの誘い水ですよ。困ったもんだ。

語ってしまうことを防止するために話を変えよう。
これ、早川書房からの出版かー。うーん、なんというか、微妙だ。
ハヤカワは一体どういう考えで……。出版に至ったハヤカワ側の経緯が気になるなー。

昔、わたしが読んでいた頃のSFは、多少メジャーな位置にいたと思う。
あくまでマイナーメジャーな感じではあったけど。
星新一なんかは、読書への入り口としてけっこう読まれてたろうしね。
大御所・中堅・若手がバランスよく存在していた気がするなあ。今はどんなもんなんでしょうね。
本屋にはあまりいかないけれど、一般的な出版状況にそれほど無関心でもないわたしの目に
ほとんど触れないということは、まず元気なジャンルとは思えない。
ということは、ハヤカワにとっては、一挙両得(1.「今日の早川さん」そのものの売上。
2.触発によるSFジャンルの売り上げ増)を狙った、美味しい商品ということになるのだろうか。

宣伝は、誰へ向けて、何を狙ったものか。
内容を考えるに、本作は、全くオタク要素のない一般人にはおそらくウケない内容だから……
……ってことはやはり開き直って、オタク層へ向けてのSF復権の布石なのか?
まあ、SFを一般人がそうそう読むとは思えんし、ターゲットの絞り方としては正統だと思うけどね。

主流派はあきらめてるのね、ハヤカワ……。という部分が微妙に笑える。
たしかになー。宮部みゆきや東野圭吾的に売れるのは無理だろう。言い切っちゃうのも可哀想だが。
いや、ハヤカワはこのまま独自の地歩を固めていって下さい。
……たとえそれが、一般人にはなかなかアピールしないものであっても。

今日の早川さん
今日の早川さん

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