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< 幸せのレシピ >

いきなり“あたな”かいっ!

と思わずつっこむ。いや、パンフレットのしょっぱなが、
「これは、日々頑張っているあたなに贈る、とっておきの幸せレシピ」
だったものでね。しかもフォント大の部分ですよ。これなあ、製作者は泣くに泣けないやね。
誤字の一つや二つはそりゃあるもんだけど、場所が悪すぎるわ。
まあ、映画の出来には関係ないからいいんだけどさ。

わたし好みの、中どころでそれなりにまとまったほのぼの映画でした。
が、どうしてもオリジナルと比較してしまうのだが、やっぱりオリジナルが優れていると思う。
こっちの作品だけを見れば充分好きな作品なんだけど。
わたしはオリジナルに当時感心したので、良くも悪くもハリウッド的甘さ緩さがある今作は、
ちょっと残念なのだ。

オリジナルはラインの美しさがあった。贅肉の少ない、スレンダーなボティ。
青を基調とした寒々しい色、厨房を初めとしたすっきりした画面構成はドイツだからこそか。
なるほど、これがドイツ映画か……といたく納得。

人物造型もオリジナルの方がシャープ。主人公はもっと料理にのめりこんでいるし、
(何しろ終盤までほとんど全く笑わない)相手役はイタリア人という設定(これが活きてた)、
子どもとの間はもっと亀裂が深かった。オーナーのキャラクターもオリジナルの方に味があったような。
今作は、むしろ登場人物がみな普通に魅力的すぎて、ぼやけた印象になった。

ただ最後がオリジナルはどうやって終わったのか記憶にないんだなー。
今作とは別な終わり方をしたような気がする。(今作の終わり方はあれはあれで良かった。)

でもまあ、オリジナルと比較しなければこれは充分良い作品。
話がある程度ちゃんとしてるしね。最後はお伽話になるにしても。
ただ、せっかくならば、厨房の人間にもう少し焦点をあてても良かったかな。
脇役を可愛く描くのは、イギリス映画とか結構上手いんですけどね。そうすれば厚みが出たと思うなあ。
そんな中、リーアはラブリーだった。最後もいい位置を占めていたし。

しかしアビゲイル・ブレスリンは上手いですねー。思わず表情に見入る。
弱冠10歳で既に女優ですな。子役は役柄として必要とされるだけの場合が多いけど、
今回、主役級トリプルはがっちり正三角形を組んでた感じ。最後のお店の看板と同じ。
役者としてはアーロン・エッカートより力を発揮していましたね。

エッカートはそれなりにかっこよくてあの役柄として充分だけど、まあ言ってしまえば単なるオトコだった。
代替可能。むしろもっとかっこよくない役者の方が味が出たと思う。
オリジナルの方の役者は、美男とはとても言えなかったが……
最初はがさつで能天気なイタリア男以外の何者でもなかったのに、
映画の後半から何だかとても色っぽくなっちゃって。キスシーンは名場面だったなあ。
こういう化け方は見ている方として得した気分になる。今作はそういう美味しさはなかった。
まあだいたいハリウッドもんには、そういう方向は期待出来ないが。

そういった意味ではキャサリン・ゼタ=ジョーンズも美人過ぎる、チャーミング過ぎるんだよ。
前半、閉塞感があればあるほど後半のカタルシスが気持ち良いものだが、
その対比が足りず、ぶよぶよだった。ハリウッド的甘さ緩さと言いたくなる所以。
彼女はウェールズ出身なんですね。少し意外だった。

……あ、そうそう。終盤近くの“テーブルクロス”はすごく好き。
ありゃ、映画館で思わず手を叩いたよ。ああいうのが予期せぬ美味しさだ。
シーンとしてはわずか3秒。その為にどのくらい練習をしたものか。
あれをゼタ=ジョーンズにやらせようとした監督と、実際にやった彼女のお手柄。
非常に煩いことを言えば、あれはキッチュな面白さだけれど。

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